ものづくりエンジニアの特許出願の流れ。特許を出願してお小遣いを稼ごう。

エンジニアのお小遣いの稼ぎ方の1つとして、特許があります。特許を出願すると、1件いくらといったようにお小遣いがもらえる会社も多いのではないでしょうか。また、すでに特許出願の経験があるというエンジニアの方も多いと思いますが、意外と全体の流れを知らない、または忘れてしまった。という方も多いと思います。

そんな方向けに、本記事では特許の出願から満了までの流れを簡単に説明していきたいと思います。(国内出願)

お金だけでなく、自分のアイデアが世の中に記録として残る、という意味でも学んでおいて損はない内容ではないかなと思います。

※お小遣いになるかならないかは、すみません。各会社の方針により金額も異なりますし、そもそも、もらえない会社もあるかもしれませんので、会社によります。というところだけご了承お願いいたします。

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特許の一生 ~出願から権利満了まで~

それでは、特許の出願から、権利満了までを時系列的に説明していきたいと思います。

ものづくりエンジニアの特許出願の流れ。特許を出願してお小遣いを稼ごう。

出願

まずは、出願までの簡単な流れです。と言ってもほとんどのエンジニア方はここまでが仕事であり、出願以降は勝手に進んでいくと思いますので、ここを少し詳しめに説明したいと思います。

発明検討

まず一番初めに実施する事は、発明を検討する事ですね。これが無いと次のステップには進めません。発明の検討方法は本記事の趣旨とはちょっと変わってしまうので、詳しく述べませんが、さわりだけ解説したいと思います。

一番重要な事は「新規性」「進歩性」と言われています。それが無いと特許出願は難しいですね。つまり、従来技術に無い新規の技術、または、従来技術から進歩した技術。このどちらかのアイデアが必要です。その中で、新規技術で特許出願するのは、正直結構難しく、多くのエンジニア方が後者の、従来技術から進歩した技術として特許を出願しているのではないでしょうか。

私自身の経験から言っても、いいアイデアだと思ったものが思いついても、特許検索すると、数年前に類似のアイデアがすでに出願されていた。という事は頻繁にありました。

後者の従来技術からの進歩という観点で、発明の考え方(特許を出すためのアイデアを出すテクニック)を簡単の説明したいと思います。

【特許アイデアだしテクニック】

  1. 従来製品と、新しい製品(新しく開発しようとしている製品)の相違点を考える。
  2. 1の相違点で、相違点からどんな良い効果がでるのかを考える。その中で効果があるもの(製品が進歩した、新規性がある)をピックアップ
  3. 2の効果が得られなかった時の課題を考える。つまりそれが従来技術の課題となる。
  4. 2の効果がなぜ生まれたのかの根本を考える。これが課題に対する根本的な解決策となり、特許となる。
  5. 4で考えた課題解決の為の根本解決策から、他のアイデアが無いか考え、バリエーションを増やす。このバリエーションがすべて特許になる。

といった感じです。

簡単に言うと、従来技術の課題に対して、新規性、進歩性のあるアイデアでその課題が解決できれば、それが特許となりえるという事です。

逆転の発想もあり、従来技術からの変化点から発生した新たな課題に対して特許を出す。という事もあります。

有名なのが、ハイブリッド車が出た時に、静かすぎて(変化点)逆に危ないから、エンジンがかかっているのと同じような音を意図的にオーディオでだす、(問題点の解決)という特許を車会社ではない方が出した。という事も聞いたことがあります。

先行文献調査

次のステップは「先行文献の調査」です。これが結構時間かかる作業となります。ただしこれを実施しないと特許を出す事はできません。

先行文献の調査とは、過去に出願済の類似特許を調査する事

前記発明検討で記載した、「従来技術の課題」というのは、もちろん自身、自社製品の課題も考えますが、特許を出願するには、先行文献を調べる必要があります。

課題を折角見つけ、いいアイデアで解決できると思ったとしても、課題と思っているのは、自分、自社だけで、既に同様な課題を他社が解決し、その解決案を特許として出願している可能性もあります。出願されている従来技術を知って、出願検討中の技術が、本当に特許として出せるかどうかを検討する必要があります。

従来技術を読み誤ってしまうと

従来技術から進歩性が無い、差別化ができない、という理由で結果特許化が出来くなる可能性があります。

従来技術を正しく認識できると、

自身の特許を、従来技術と差別化が可能であり、結果出願に結び付ける事が可能となります。

また、出願済特許をいろいろと検索していくと、

その出願済特許の課題も見えてくる為、その課題に対する解決案として、新たなアイデアを特許を出せるという場合もあります。

抄録作成

発明検討をし、他社特許調査をした後、次のステップは、抄録の作成です。

抄録とは、明細書作成(次ステップ)に必要な情報を、分かりやすく文章や図でまとめる事です、本抄録を元に、特許の出願明細書が作成され、審査を得て特許となります。このステップは会社によって異なり、中にはアイデアシートと呼ばれたり、呼ばれ方は様々ですが、

目的は、自分が開発した技術を、技術初心者に方(特許事務所の方)にも分かるように次のストーリーでまとる事です。

  1. 概要の説明
    • 本発明が何なのかの概要を記載。詳細ではなく、全体像を分かるようにする事が重要
  2. 従来技術の説明
    • 先行特許調査、発明検討を元に、従来技術にどういう物があるのかをまとめる。
  3. 従来技術に対する課題解決手段と原理
    • ステップ2でまとめた従来技術に対し、課題を明確にし、その課題に対する解決案として、本発明がどのような効果をもたらすのかをまとめる。ここが特許の本質となり、従来技術に対する新規性、進歩性が問われる部分となる。特許の「請求項」として書かれる部分になる。
  4. 具体例
    • 発明内容を具体的に説明する。この中で、実施例がいくつかあるのであれば、それも記載し、この内容が明細書の中の「実施例」として書かれ、多ければ多いほど、請求範囲が広がる。
明細書作成

通常、エンジニアであれば、前ステップの抄録を元に、特許事務所と打ち合わせをする事になると思います。目的は抄録を元に明細書の作成依頼をする事。打ち合わせでは、抄録の内容を説明し、それを元に特許事務所が明細書を記載する。というのが一般的だと思います。明細書は特許特有の表現だったり書き方に特徴があるので、私個人的には、この書き方はを覚えるのはエンジニアの仕事ではなく、抄録作成で、エンジニアの言いたい事を自分の言葉でまとめる所までが仕事で、明細書の作成は特許事務所の役割かなと思っています。

※中には明細書作成もエンジニアが実施する企業もある。

明細書で重要な内容は「請求項」です。請求項とは、特許として申請する内容であり、この内容を抄録の中でしっかり記載し、通知する必要がある。

出願

最後のステップは出願。明細書を特許庁へ提出。エンジニアの仕事としては、書かれた明細書をチェックして、修正が必要であれば、修正依頼をし、なければそのまま特許庁へ提出という流れになると思います。

出願公開

出願をして、1年6カ月経つと、出願した特許の内容が誰でも見れるように公開され、それを出願公開と呼びます。これは、特許が認められるかどうかにかかわらず公開されます。注意点がいくつかあります。

  • 審査の結果に関係なく公開される。つまり記載された内容が公開される事で、ノウハウや、自社での取り組みが社外に公開される事となる。
  • 本公開により、公知の技術になってしまう為、もし関連技術を持っており、出願を検討している場合、公開前に出願しておかないと、進歩性が否定されてしまう場合がある。つまり、類似特許、関連特許は公開前に合わせて出願する事をお勧めいたします。

審査請求

特許は出願しただけでは権利化されない為、権利化する為には、まず権利化できるかどうかの審査を特許庁に申請する必要があります。その申請の事を「審査請求」と呼ばれます。

審査請求書の提出は出願から3年以内と言われています。

この期間に審査請求しない場合は、出願した特許は無効となり、権利を取得する事はできません。

注意点としては、ここで、審査請求をしなかったとしても、出願公開の事実は変わらないという事です。つまり、権利化はしていなくても、出願公開により公知の事実にする事で、他社が類似の特許を出した場合にその新規性、進歩性を否定でき、他社特許を拒絶する事が可能となる。というメリットはあります。

権利化しておいた方が、他社特許の拒絶に有利になるのでは?審査請求しておけばいいのでは?

と思われる方も多いと思いますが、審査請求にも費用がかかる為、その費用の事も考慮して、特許の内容によって、審査請求をする、しないを各企業が考えている、というのが実態ですね。

拒絶理由通知

審査請求を提出すると、約10カ月前後で審査結果が届きます。

その間にもし、本特許が審査され、特許性が認められず、特許件が付与出来ない場合には、「拒絶理由通知書」が届きます。

もし拒絶理由を解消する場合、原則60日以内に、意見書の提出、または手続き補正をしなければいけません。それぞれの意味は次の通りです。

  • 意見書の提出
    • 審査官の誤りを指摘し、拒絶理由が存在しない事を主張する手続き
  • 手続補正
    • 審査官の指摘を一部認めつつ、出願内容を修正する事で、拒絶理由を解消する

特許査定

拒絶なく、出願した特許に問題がなかった場合、もしくは、意見書の提出や手続補正で拒絶理由が解消され、対象の出願に特許が認められた場合に特許庁から出願人に通知されるものを特許査定と言います。

ここまでこれはゴールは目の前です。

登録

特許査定の後、30日以内に、特許庁に対し所定額の特許料(3年分の特許料)を納付する。これにより、特許番号が付けられ、権利が発生する。

つまり特許権は登録日から発生する事になります。

維持年金

維持年金とは、特許権を維持する為に納付する支払いで、日本では、特許取得から4年目以降から必要となります。

4~6年、7~9年、10年~20年で納付額が変わり、だんだん高くなります。

※1~3年分は登録時に支払う

権利満了

特許権の継続期間が満了する事を「特許切れ」、「権利満了」という。期間は、出願日から20年(※権利化してからではなく、出願してから、20年)

20年経つと、特許権が消滅し、消滅した特許の誰でも自由に使える事が可能となる。

✓まとめ

以上、特許出願の流れと、満了までのプロセスを時系列的にまとめてみました。企業で働いていると、日々の業務が忙しく、特許を出す事が後回しになりがちです。しかしながら、企業によっては出願時だけでなく、権利化した後、権利料を支払ってくれる企業もありますので、自社の仕組みを確認し、お小遣い稼ぎとして取り組むのもいいし、名前を世の中に残す為のモチベーションとして取り組むのもいいのではないかと思います。

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