ものづくりエンジニアの仕事内容と製品が出来るまでのプロセスを公開します

ものづくりエンジニアの仕事内容と製品が出来るまでのプロセス

これからものづくりエンジニアになりたい。という方、エンジニアの仕事内容はどんな感じなのだろうか?製品が出来るまでのプロセスというのはどのようになっているのだろうか?と疑問に持たれていると思います。私も学生時代そうでした。

そんな疑問にお答えいたします。

本記事では、製品が出来るまでの簡単なプロセスと、その過程の中でエンジニアが行う仕事内容を、解説していきたいと思います。

※会社ごとに異なりますので、あくまで1例として記載しますが、3社ものづくりの会社を経験し、3社とも似たようなプロセスだったため、どの会社も概ねこのようなプロセスで製品開発をしているのではないかと思います。

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製品の開発プロセス

製品の開発プロセス

それでは、製品が出来るプロセスを記載しながら、その間にエンジニアが活躍する場面をメインに記載していきたいと思います。プロセスは次の①~⑧であり、製品にもよりますが、②~⑧が1年~5年程度の周期で実施され、製品が出来上がります。これが1つの製品のサイクルとなっています。

例えば、iphoneを考えていただければ分かりやすいですが、新製品は毎年発売されていきます。つまりこのサイクルを1年で回している事になり、iphone12を例にとると、複数のシリーズがほぼ同時に発売されていますので、先行開発期間を除き、④~⑧のサイクルを全シリーズ1年で実施している事になります。それだけで大変な事が分かりますよね。

一方、車の場合はどうでしょうか?マイナーチェンジとメジャーチェンジがあり、システムごと刷新されるのはメジャーチェンジの時という場合が多い為、つまりメジャーチェンジの時は約5年くらいかけて、下記のプロセスを回し、マイナーチェンジの時は約2年ほどで運用する。という事になります。

それだけで、スマホに比べ車は慎重に開発を進めている事が分かりますね。理由の詳細は別の記事で記載したいと思いますが、大きくは信頼性の担保に時間がかかるから。というのが最大の理由となります。

それでは開発のプロセスを説明していきたいと思います。

①研究開発

ここのフェーズは研究所のフェーズとなります。多くの企業が10年先、20年先をめがけて研究所の中で技術の種を作っております。ただ、最近の傾向としては、10年、20年も先ではなく、すぐ近くの未来に向けての研究開発が多くなってきている印象があるのと、大企業になればなるほど、先端技術を自社開発ではなく海外から購入したり、世界の進んでいる企業と協働開発をするという方が多くなっているかもしれません。

ここで働くエンジニアは多くは博士課程を卒業した方がメインになっている企業が多いと思います。

②製品企画、マーケティング

製品企画、マーケティング

このフェーズからが実際の製品開発のフェーズとなります。マーケティングとは、簡単に言うと市場のニーズを調査し、自社の製品戦略をどうするかを考える事です。

例えば、高級路線で行くのか、低価格路線で行くのか、日本で売るのか、中国で売るのか、といった具合に、市場とニーズを調査します。また、他社の動向を調べ、他社との差別化をどうするか、自社の強みをどのように活かすのか、それらを調査する事をマーケティングと言います。

その後、そのマーケティングの結果を得て、実際にどんな技術を使いそれを実現していくのか、どういった製品戦略で製品を開発していくのか、何をいつまでに作るのかを、長期レンジと短期レンジで考える事を製品企画と言います。

製品戦略としてたてた長期のロードマップの中に、①の研究開発内容を入れ込み、数年後はその技術を具現化する。といったように、長期の製品戦略を考えます。

これらを検討する為には、直観で思いついた物を取り上げたり、 個人的な意見を主張したりするのではなく、あくまで理論的に、客観的に市場、自社、他社を分析する必要があります。そこで必要になるのが、ロジカルシンキングです。

->【本当に役立つ】ロジカルシンキング(論理的思考)、問題解決の手法

この戦略をどのように立てるかで、そのビジネスが成功するか失敗するか決まると言っても過言ではなく、とても重要なプロセスとなります。

会社によってはこのマーケティングもエンジニアが実施している所もありますが、多くは、その結果を受け、製品戦略を考えるところからエンジニアが参加する場合が多いと思います。

③先行開発

ここからが、エンジニアのメインの仕事になってきます。②までで何をいつまでに作るのかが決まった所で、次期製品の開発に対する取り組みを行います。

つまり、②で立案した戦略の具現化を先行的に開発し、予定通り製品化できるかどうかを確認する為の開発を実施します。

簡単な製品であればこのプロセスは省略されますが、新規製品の場合は必ずこのプロセスを挟みます。

例えば自動運転の車を世の中に出す。といった場合、いきなり製品化されたら危なくて仕方がありませんよね。AppleやGoogleを見ていただければ分かりますが、かなりの長期間自動運転の先行開発をしている状況かと思いますが、このように、量産の目途づけが出来るまで実施されます。

量産の目途づけとは、製品コスト、機能性能、信頼性が十分かどうかの観点で判断されます。

一方スマホをはじめ民生品であれば、現在の製品を開発開始する、1年くらい前に先行開発は実施されます。

個人的にはエンジニアとしては、この開発が一番楽しい期間だと思います。

この辺りのタイミングでは特許出願も館得る必要があります。特許に関する記事は下記に詳しく載せておりますので、よろしければご参照お願いいたします。

ものづくりエンジニアの特許出願の流れ。特許を出願してお小遣いを稼ごう。

プロセスもアジャイル等で実施するメーカが増えてきていると思います。アジャイル開発に関しては下記の記事を参照頂ければと思います。

今更聞けない、アジャイル開発のスクラムの進め方と各プロセスの説明

④試作

さぁ、ここからが量産設計のフェーズへ入ります。量産設計のフェーズとは、製品を世に中に出す日程が決まって、その発売日に向け、設計を進めていく事です。ここからは正直大変なフェーズに入ります。

理由として、③までは、仮に失敗してもやり直しが出来るフェーズですが、これ以降はたとえ失敗しても、世の中に製品を出す日程は基本的には変えられません。つまり失敗しても、開発期間は伸びず、限られた時間の中で、やり直しをしなければいけない。という事です。

たとえ、試作品が失敗し、動かなかった場合、もう一度試作をする際も、次の工程の日程は変えられない為、その分残業や休出をし、時間をつくらないといけないという事になります。

そうならない為に、チームをしっかり作って、開発体制を作り、プロジェクトを運営していきます。

この④の工程は試作というプロセスですが、基本的には、製品と変わらない回路、メカ、ソフトの設計をします。つまり、iphoneであれば、製品のiphoneと同じ物を作ります。その為、エンジニアは少なくとも次の体制を組み、本業務に取り組む事となります。

エンジニアの皆様は、こういったプロジェクトに参加する為には、電気、メカ、ソフトのどれかの分野の専門である必要があります。

  • プロジェクトマネージャ(本プロジェクトの責任者)
  • プロジェクトリーダ(本プロジェクトの開発リーダ)
    • 電気設計リーダ(電気回路開発リーダ)  ー チームメンバ
    • メカ設計リーダ(機構開発リーダ)    ー チームメンバ
    • ソフト設計リーダ(ソフト開発リーダ)  ー チームメンバ

この試作工程の目的は次の通りとなります。

  • 機能性能の確認
  • 信頼性の確認

つまり試作を通して、予定通りの機能が達成出来ていて、予定通りの性能が出せているかどうか、信頼性が十分かどうか?を評価します。

例えば防水機能を備えた製品であれば、本当にこの設計で防水性能が目標を達成できているかどうか?10年保証といった製品が本当に10年保証できる設計になっているかどうか?といったように、製品が満たさないといけない、機能性能や信頼性目標をクリアできているかどうかを試作で確認します。

これらの機能性能、信頼性の確認はエンジニアも実施しますが、品質保証部門と連携する事が多いと思います。

すべての試験が合格できれば次の工程へ進みます。

⑤金型試作

④の工程で機能性能、信頼性の確認が済んだ次の工程は、金型試作の工程となります。金型試作とは、主にメカ部品が関係するのですが、本金型を用いた試作となります。④の工程は試作金型を用いて試作品を作り、問題点がないかどうかを評価し、問題があれば、金型の修正を考えます。その結果完成した金型を、本金型として、それを用いて試作を行います。

金型とはメカ部品を作成する為の型であり(ここ参照)これの作成に莫大な金額がかかる為、試作工程で問題を十分洗い出し、もう修正が無い。といった段階になり、初めて、本金型を作成します。

つまりこの段階で出来上がる試作品は、量産品と全く同じ物となります。このフェーズで基本的には、電気設計者が作成する基板や、ソフト設計者が設計するソフトも量産相当の物となります。

この金型試作を得て、④の試作同様、次の項目の最終確認を実施します。

  • 機能性能の確認
  • 信頼性の確認

これらの確認で合格すれば、ものづくりエンジニアとしての本文は終わりとなりますが、仕事はまだまだ続きます。

ここでの試作は金型は本型を用いますが、多くの場合、その試作品を作る工場のラインは試作ラインである場合がほとんどです。

試作ラインとは、例えば、量産は自動化してすべてロボットで生産しようと計画していても、その工程の立ち上げが出来ておらず、手作業で組み立てている。といったように、実際の生産とは、プロセスが異なるラインの事を言います。

なぜそうなるかというと、生産ラインは実際の量産部材が確定した後に工程を組む事が多い為です。それはそれぞれの生産設備はものすごく高い為、試作型を基準に設備を作った後、もし本型で、仕様が変わったり、機能性能がかわった為、設備も作り直しになるという状況を避ける為です。(金型試作で、設備も同時に立ち上げる場合もあります)

生産設備の立ち上げは、生産設備を管理する部門が設計を行うのですが、製品の仕様が分からないと作れない為、製品を設計するエンジニアと、設備設計のエンジニアが会話をして、最適な設備の立ち上げを実施していきます。

⑥量産試作

チーム

いよいよ最後の工程です。量産試作とは、量産の予行練習です。製品も量産同等。設備も量産同等、部材発注システムや、工程管理システム、すべてが量産相当の状態で実施する試作となります。

部品の発注から、組立、検査、出荷まで、すべて量産工程で実施し、問題ない事を確認し、製品の立ち上げが完了します。

ここでは、もちろん製造部と連携します。

⑦量産

量産開始です。これまでの工程はすごく大変ですが、自分が設計した物が、テレビのニュースで発表されたり、Webでニュースになったり、そういった時に、「がんばってよかったな」とものづくりエンジニアの醍醐味を感じるでしょう。

⑧振り出しへ戻り、次の製品の開発を進める

このプロセスを繰り返し、その中で、メンバ→リーダ→マネージャと役割を変えたり、製品がかわったりしながら成長していきます。

プロジェクトマネージャに関する記事は下記を参照お願いいたします。

->プロジェクトマネージャが絶対抑えるべきスキル教えます【募集要項実例】

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まとめ

ものづくりエンジニアの仕事内容と製品が出来るまでのプロセスを記載してきました。もし学生の皆様が本記事をみてるとしたら、想像と少し違うのではないでしょうか?黙々と設計を一人でしているのではなく、むしろプログラムをしていたり、回路設計をしていたり、CADを使っている時間は、全体のプロセスのほんの数%です。

ほとんどの時間は、他の部署と連携しながら、多くの方を巻き込みプロジェクトを進めていく。というのが、ものづくりエンジニアの仕事になります。もちろん技術力は重要です。技術を持つと同時に、品質保証部、製造部、生産技術部、企画部といった他の部署の中心に立ち、プロジェクトを回していく、そういった力がものづくりエンジニアには必要であり、そういった業務をする事で、その製品が世の中に出た時は格別に嬉しく感じるのではないかと思います。

エンジニアに興味がある方が下記も参照頂ければと思います。

参考:収入アップの為の、おすすめプログラミングスクール3社を紹介します

アジャイル開発手法もよろしかったらご参照ください。

参考:今更聞けない、アジャイル開発のスクラムの進め方と各プロセスの説明

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