車載用高速伝送ソニーのGVIFとは、FPD-LINKやGMSLも合わせて解説

車載用高速伝送ソニーのGVIFとは、FPD-LINKやGMSLも合わせて解説

近年車載用のカメラが増えてきています。ご存知の通り、ドライブレコーダを始め、駐車時に用いるバックモニターや全方向を監視する周辺監視カメラ、衝突防止用、ドライバ監視用と様々です。それらのカメラの解像度は年々上がってきている為、その大容量の映像データを遠く離れた場所に置いてあるECUまで、高速に長距離伝送をしなければいけません。

一般的に、機器を接続する通信規格は、USB、HDMI、PCIexpress、等が有名ですが、車載製品にはほとんど使われていません。理由は、車の中は環境が家の中と異なり、過酷であり、これらの一般的な規格では、すぐに通信途絶を起こしてしまうからです。

そこで開発された、車載用高速伝送LVDS規格が、GVIF(ソニー)、FPD-LINK(テキサツインスツルメンツ)、GMSL(マキシム)です。なぜ3種もあるかというと、各メーカが競い合っているだけで、エンジニアから見たら、1つにしてほしいと思っているのですが、規格が乱立しているというのが現在の状況です。

前置きが長くなりましたが、本記事では、エンジニア向けにこれらの通信規格に関し、特にトヨタ車でも採用されていると言われている、ソニー製のGVIFとは?について、エンジニア視点で説明していきたいと思います。

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GVIFとは

GVIFとは、Gigabit Video InterFaceの略で、ソニーが開発した、差動、もしくは同軸でデジタル伝送が可能なI/F規格です。最大で4.8Gbps(GVIF2世代)の伝送が可能となります。

GVIFという名前は、このインターフェイスのただの名称と思っていただければよいかと思います。実際の物理層は差動、もしくはシングルの高速伝送路となっています。

このインターフェイスが使われている場所は下記

  • フロントカメラ⇔ECU間
  • バックカメラ⇔ECU間
  • サイドカメラ⇔ECU間
  • ディスプレイ(LCD)⇔ECU間
  • など、映像伝送のほとんどの場所に使われています。

特徴は、カメラだけに限られた規格ではなく、LCD等の映像信号も伝送可能であり、車載カメラ、車載マルチメディアに幅広く使われている事です。

GVIFが使われているのは、車載カメラがメインとなり、ドライブレコーダ、バックモニタ、衝突安全用のカメラといったものが主となります、一部記事を書いておりますので、ご参照頂ければ幸いです。

参考:エンジニア視点で考察。ドライブレコーダーのおすすめ2021年版

参考:【次世代】RGB-IRイメージセンサ―とAIを活用した、車室内カメラ

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GVIFで何が出来るのか

それではGVIFで何が出来るのかを説明していきたいと思います。主流のGVIF2を例にとり、仕様に関し簡単に説明をしていきます。

基本的な接続は下の図のようになり、送信側をシリアライザ、受信側をデシリアライザと呼びます。シリアライザとは、複数レーンのMIPIを、差動もしくはシングル1レーンの信号に変換する事で、信号をシリアル化する為、シリアライザと呼ばれます。デシリアライザは名前の通り、シリアル化された信号を復元する為に、「デ」を頭につけます。

入力、出力とも、MIPI D-PHY CSI-2 インターフェース が採用されており、(CMOS入力の物もある)シリアライザとデシリアライザの間がGVIFの規格で伝送される。というイメージです。

MIPIに関しては下記に詳しく記載しておりますので、ご覧いただければと思います。

MIPI D-PHY徹底解説、カメラ開発のものづくりエンジニア必見

MIPI CSI-2 の概要、カメラ開発のものづくりエンジニア必見。

  • 映像信号の伝送
    • 1080p 30fpsまでの解像度のカメラの伝送へ対応
    • 対応映像フォーマット:Raw8~20bit、YUV4:2:2 8bit
    • MIPI D-PHY CSI-2 インターフェース対応
    • GVIF最大伝送レート:4.8Gbps
  • デバイス間のI2C,SPI通信
    • シリアライザ⇔デシリアライザ間を仮想的にI2C通信する事が可能。上の図で説明すると、マイコンがI2Cのマスタになった場合、デシリアライザ、シリアライザ、カメラへI2Cでアクセスが可能。
    • シリアライザ⇔デシリアライザ間を仮想的にSPI通信する事が可能。SPI通信の方向は任意に設定可能(シリアライザ→デシリアライザか、デシリアライザ→シリアライザが選べるという事)
  • デバイス間のGPIO通信
    • シリアライザ、デシリアライザ間を仮想的にGPIOの通信をする事が可能。つまり、シリアライザのGPIO端子をHighにするとデシリアライザのGPIO端子がHighになるとった操作が可能。方向は設定に応じて、シリアライザ→デシリアライザ、デシリアライザ→シリアライザどちらでも可能。
  • デイジーチェーン接続
    • デイジーチェーン接続とは下図のような接続方式です。このように多くのカメラを数珠繋ぎに接続出来る事を言います。これが出来ると何がよいのでしょうか?それはケーブルの本数が減らせる、という事です。下の例の場合、カメラが3台ある為、通常はシリアライザ、デシリアライザの間のケーブルも3本いるのですが、それがこの接続をする事で、1本で実現が可能です。自宅のUSBや電源ケーブルも少ない方が机の周りがすっきりするし、安上がりですよね。それと同じで、車の中のケーブルの本数もなるべく少なくしたい。そういったニーズに対応した機能となります。
  • STP(差動)/Coax(同軸)通信
    • STPとはShielded Twisted Pairの略であり、シールドがされているツイストペアケーブル(配線)の事を言います。つまりは差動通信という事です。
    • CoaxとはCoaxial Cableの略で、同軸ケーブルの事です、同軸ケーブルによるシングルエンドの通信の事です。
    • GVIFはこの差動と、シングル通信を設計で変更する事が可能です。
  • 電源重畳
    • GVIFはSTP、Coaxともに電源重畳をする事が可能です。電源重畳とは通信ラインに電源を重畳する事で、電源の専用配線を不要にする技術です。つまり同軸での通信を選択した場合は、1本の同軸線で、電源も通信もできてしまう。という事になります。

タイプは異なりますが、高速伝送路に関する記事は下記ご参照頂ければ嬉しいです。

参考:DDR-SDRAMとは、仕組み、動作、オシロスコープでの測定方法の解説

参考:USB3.xとUSB2.0の違いをエンジニア視点で解説します。

参考:差動伝送規格、LVDSとは?誤解されがちな規格とメリットを徹底解説

GVIF/FPD-LINK/GMSL比較

それでは類似品である、FPD-LINK、GMSLとGVIFを比較してみましょう。

※個人的に集めた情報なので間違っているかもしれません。間違っていたら、申し訳ございません。

GVIF2(Sony)FPD-LINK3(TI)GMSL(Maxim)
型名CXD4960/4963DS90UB933/934MAX96705/96706/90707
データレート4.8Gbps1.87Gbps1.5Gbps
解像度/フレームレート2M/30fps1M/60fps2M/30fps
バックチャネルI2C
SPI
GPIO
I2C
SPI
GPIO
I2C
UART
GPIO
動作温度105℃105℃115℃
パッケージサイズ5mmx5mm5mmx7mm4mmx5mm

データレートはGVIF2が良いですが、基本的な機能は同じかなという印象です。まあ、これだけの仕様を比較しても良く分からないという感じですね。実際の設計の時は、コストや、デバイスのサイズ、消費電力、ノイズ観点を見て、どれが一番システムに最適か考える必要があるかと思います。

動画でも解説しておりますので、よろしければご覧ください。

これまで説明させて頂いたGVIFを扱う基板を設計する上で、基板のパターン設計、EMC対策は必須です。下記に高速配線のパターン設計の方法対策に関しての記事も書いておりますので、よろしければ、ご参考にしていただければ幸いです。

【高速信号配線&基板ノイズ対策】プリント基板のパターン設計ノウハウ集

ノイズとの闘い。ものづくりエンジニアの為の、EMCとは?EMC設計技術とは?

エンジニアになる為のブログラムの学習は下記から。

参考:収入アップの為の、おすすめプログラミングスクール3社を紹介します

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