カメラ開発に関わるエンジニアの為の、カメラの客観的評価方法7選

エンジニアの為の、カメラの客観的評価方法7選

カメラの評価方法には数多くの種類があります。また、カメラには用途別に、スマホ、デジカメ、内視鏡、監視カメラ、車載と多岐にわたっています。

しかしながら、どのカメラも評価する時に重要視されている項目は概ね決まっており、本記事では、エンジニア向けに、カメラの評価項目とその方法について解説していきたいと思います。

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カメラの評価方法7種

本記事では、これだけ覚えれば一通りカメラの良し悪しが評価できるという9種類の評価方法について解説していきます。

フォーカス/解像度の測定と評価

フォーカス/解像度とは、レンズのピントがどれだけあっているか、どれだけ細かい物が撮像できるか。という事であり、次の評価方法でそれが定量的に分かるようになります。

1.まず次のような解像度チャートと言われるチャートをカメラで撮影します。下の例はISO12233という規格に準拠した物ですが、それ以外の物でも構いません。

注意点としては、手持ちのカメラの画角と、解像度チャートの大きさが異なる場合、チャートの縦をカメラの縦方向の画枠に合わせる。という事が重要になります。これをしないと解像度は測定できませんので、注意が必要です。

理由としては、下に記載した、白と黒の縞々のコントラストを使って解像度を測定するのですが、これらのチャートに記載されている数字は、古くから使われているTVラインという定義に基づき作られており、それは縦方向に画枠を合わせた時に、この数字を用いて解像度の測定が出来るようにチャートが作られている為です。

TVラインの定義は下記となります。

画面の垂直方向の高さに等しい水平幅の中に、白黒の垂線が何本まで分離して見分けられるかを表す。この際、白と黒の垂線をそれぞれ1本と数える

重要なのは、下の図に示す、くさびチャートと言われる模様や、単に白黒のゼブラチャートが含まれるチャートが必要となります。

くさびチャート

解像度チャート、くさびチャート

ゼブラチャート

解像度チャート、ゼブラチャート

2.カメラの明るさを調整する。

次にカメラの露光時間を調整して、チャートの明るさを調整します。この明るさの定義はなく、白飛びしなく黒潰れしない、ように露光時間を合わせる必要がありますが、一般的にはチャートの白の部分を明るさとして、全諧調の半分くらいの明るさに合わせます。8bitであれば、256諧調ですので、半分の120~125くらいに画面中心の白色が合うように設定します。

理由としては、解像度を測定する時は、コントラスト(白と黒の明るさの比)を見るのですが、白飛びや黒潰れしていると、それらが正しく見る事が出来ない為です。

また、明るさを調整する方法として、露光時間を変更する方法と、ゲインを上げる方法がありますが、前者の露光時間を変更する方法を用いて、明るさ調整する必要があります。ゲインを変更すると、ノイズが出てくる事もあり、正しく測定できない為です。

3. 目視確認の場合、上記白黒の縞々が見える所の数字を確認します。

上のくさびチャートでは、12と書かれている辺りくらいは、白黒の縞々が見えていますので。その数字が撮像しているカメラの解像力となります。12であれば1200TV本です。1200TV本というのは、画面の縦の中に1200本の白と黒の線がそれぞれ600本。合わせて1200本見えるくらいの解像度である。という意味となります。

4. 定量的に想定する場合は2つの方法があります。

  1. ISO12233に準拠したCIPA測定ツールを活用する場合。
    • このページよりダウンロードして測定します。測定方法は左のリンク参照お願いいたします。
  2. オリジナルでツールを作成
    • 上記ツールが使えればよいですが、そうでない場合、解像度を測定する為には、空間周波数と、コントラストの2つの測定を実施する事で導く事が可能です。
    • コントラスト
      • コントラストとは、簡単に言うと、上のチャートの白と黒の輝度差です。例えば、8と記載されている位置の白と黒の輝度差と、12と記載されている箇所の白と黒の輝度差が異なるように見えると思いますが、その輝度差の事をコントラストと言います。
      • 理想的には、白と黒の輝度差は白:255、黒:0になって欲しいですが、そうはならず、中間輝度になります。例えば、白:200,黒:30となった場合、コントラストは、(200-30) / 255 ≒ 0.66(66%)として導きます。
    • 空間周波数
      • コントラストを求める際、どの空間周波数でのコントラストを指しているかを示す必要があります。空間周波数とは、くさびチャートの数字の事です。例えば800TVラインではコントラスト60%。1200TVラインではコントラスト30%といったように、空間周波数ごとにコントラストを出し、この空間周波数とコントラストの組み合わせで、性能の確認をします。この空間周波数はTVラインではなくラインペア(lp/mm)という定義が良く使われます。
      • ラインペア(lp/mm)とは、1mm辺りに撮像できるラインのペア数の事を指します(TVラインの時は白黒それぞれ1本でしたが、ラインペアでは白黒の2本で1ペアという考えとなります。)1mmというのはイメージャ画素上の長さになります。例えば、1280×960画素をもつイメージセンサがあり、1ピクセルの画素サイズが3uだとすると、3umx960画素=2.88mmが縦方向の長さになります。その縦のサイズに例えば1440TVライン見えているとすると、2.88mmのサイズの中に1440ライン(720ラインペア)撮像できる、という意味となり、720ペア/2.88mm=250lp/mmというように換算が可能となります。こういった理由より、上記に記載したように、カメラの縦の画枠いっぱいに解像度チャートを撮像する必要があります。
    • 上記、空間周波数を横軸、コントラストを縦軸にグラフにした物が、レンズ性能評価で良く用いられるMTF特性となります。

色再現性の測定と評価

色再現性検査とは、オリジナルの色(撮影した画像の色)が出力された時に再現できるかどうかを検査するものです。検査には、マクベスチャートと、ベクトルスコープを用いる場合が多いです。

■測定方法

1.マクベスチャートをカメラで撮影します。

マクベスチャートは↓のようなチャートで、カメラの画面の中心付近(シェーディングの影響を受けない辺り)に配置して撮影します。

2.検査領域の設定

マクベスチャート(下の図)の下から2段目が検査で使う色です。このように、青、緑、赤、黄、マゼンタ、シアンの7か所を検査枠として設定します。

マクベスチャート

3.ベクトルスコープを用いて、各色が規定の範囲に入っているか確認する

下の図のように、色再現性を数値で示す事ができるものをベクトルスコープと呼びます。手順2の色をターゲットとした時にベクトルスコープの各色の枠の中に納まるかどうかを検査します。この枠の大きさは、各企業ごとに異なり、それぞれの会社の色合いはこの検査枠で決まります。

ベクトルスコープ

注意点として、手順1でマクベスチャートを撮影する際、ホワイトバランスがズレていると、正しく色が検査出来ない為、マクベスチャートの白色の部分を見ながら、白がしっかり白になっている事を確認する必要があります。もし白くなっていない場合は、ホワイトバランスをマニュアルで動かす等で、白を白にする事が重要です。

諧調性(リニアリティ)の測定と評価

諧調性を簡単に説明すると、滑らかな画像が表現できるかという事です。段階的に変化する濃度のステップによって、諧調性能のリニアリティを評価します。検査で使用するのは、グレースケールチャートです。下図。

リニアリティチャート

■測定方法

1.グレースケールチャートを撮像します。

色再現の時同様、カメラの画面の中心付近(シェーディングの影響を受けない辺り)に配置して撮影します。

2.検査領域を下の図の赤枠のように設定します。

リニアリティチャート

3.各領域内の平均輝度を取得します。

取得した輝度値を黒⇒白の順に並べる事で、諧調のカーブを得る事が出来ますので、それが目的の諧調になっているかどうかを確認し、予定と異なる場合はガンマカーブ等を変更する事で調整します。

ノイズの測定と評価

様々な測定方法があると思いますが、最も簡単な方法を記載したいと思います。

■測定方法

1.カメラを遮光して撮像。

カメラのGain値を想定されている設定値の最大に設定、もしくは、Gain値の異なる設定で数枚撮影すると良いと思います。

2.画面全体の輝度の平均値と標準偏差を取得

平均値を取得する事で、黒浮きを確認する事ができ、標準偏差を見る事で、輝度そのもののバラつき、ざらつき感を測定する事が出来ます。

ディストーションの測定と評価

ここではTVディストーションの測定方法を示します。TVディストーションの説明は下記参照

【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識

■測定方法

1.ディストーションチャートを撮像。

下の図のように格子状になっているチャートが販売されているので、そのチャートを購入し、画面いっぱいに撮像します。チャートが無い場合は、例えばブラインドとか、縦横にマジックで線を引いた物で代用する事も可能です。

ディストーションチャート

2.下の式に基づきディストーションを測定

この式に当てはめれるような、格子状のチャートが撮像出来れば問題ありません。下の図の△Hは上記格子状のチャートがカメラで撮像し、歪んで見えた結果となります。つまり理想的な□の模様がどの位歪んでいるのかを測定する事になります。

ディストーション計算方法

シェーディングの測定と評価

光学系やCMOSセンサの性能による、出力画像に見られる広範囲にわたる明暗のひずみをシェーディングと言います。シェーディングの発生原理は下記の記事を参照いただければ幸いです。

->カメラの性能を決める、ISP(イメージシグナルプロセッサ)の機能と信号処理

シェーディングとは、輝度の濃淡レベルが画面全体で均一ではない事をいい、特に上記原理に伴い、周辺部分の輝度レベルの低下が、ほとんどのカメラでは発生します。これは水平方向、垂直方向平等に発生し、主に、垂直方向を垂直シェーディング、水平方向を水平シェーディングと呼びます。

レンズシェーディング

■測定方法

1.真っ白なチャートを撮像。もしくは、均一な光が出る光源を直接撮像。

2.水平、垂直の位置を決めラインビューワ等を用いて輝度のカーブを測定(下図)

レンズシェーディング測定方法

3.画面中心と、周辺位置の輝度差を算出

オートホワイトバランスの測定と評価

ホワイトバランスとは、簡単に言うと、「白を白く見せる」為の機能です。人間の目は、太陽光の下でも、蛍光灯の下でも白い被写体は白く見えます。しかし、カメラでは、ホワイトバランス調整をせずに白いシートを写しても、太陽の下と蛍光灯の下、白熱灯の下それぞれで色の差異が現れ、光源に依存している事が分かります。これを自動的に補正し、白を白く写す機能がオートホワイトバランスと言います。

■測定方法

1.真っ白なチャートを撮像。

チャートに照射する光源は、人工太陽、蛍光灯、白熱灯といったように、色温度の異なる複数の光源を用いるのが良い。

2.色温度ごとにその時出力される画像の各色成分(RGB)のヒズトグラムを取得

上記真っ白なチャートを撮像した時にその時の、RGBのそれぞれの色がどのように分布しているかをヒストグラムを用いて調べます。ホワイトバランスが効いている時は、R,G,Bのそれぞれのヒストグラムがほぼ同じ形を表すため、それらを比較する事で、機能が正常かどうかを検査します。

✓まとめ

カメラの評価方法についてまとめました。これだけ測定できれば、カメラの良し悪しをそれなりに客観的に判断できると思います。特別なチャートや設備がないと出来ない物もありますが、お手持ちのスマホのカメラを評価してみるのも面白いと思います。

参考:モノづくりエンジニアの為の、CMOSイメージセンサの基本原理

参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識

参考:モノづくりエンジニアの為のカメラモジュールの構造

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