【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズコーティングの関係を解説

【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズのコーティングの関係を解説

カメラのレンズ基礎知識入門という事で、レンズに関する基礎を記載していきたいと思います。今回は、カメラに写る、ゴーストと言われる現象とレンズのコーティングに関して説明していきます。カメラ好き、レンズ好き、エンジニアの方向けに分かりやすく記載していきたいと思います。

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ゴーストとは

写真を撮った時に下の写真の赤丸部分ように、太陽の周りや少し離れた場所に存在しない光が写った事は無いでしょうか?これが「ゴースト」と言われる物です。

ゴーストとは、

太陽等の強い光が、レンズ内で複数回反射し、撮像素子に結像してしまう現象を言います。

結果的に現実には存在しない光が写ってしまう現象が発生します。下の写真の赤丸がゴーストです。

よく一緒に表現される「フレア」という言葉があります。こちらも発生原理は同じなのですが、レンズ内で反射した光が、撮像素子の1点に結像されるゴーストと異なり、反射光が撮像素子全体に分散され、下の写真のように画像全体が白っぽくボケたような映像として現れる事が特徴となります。

下の写真はゴーストもフレアも出ている写真なので分かりにくいかもさ入れませんが、全体的に白っぽい映像になっている事が分かると思います。これがフレアです。

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レンズのコーティングとゴースト

レンズのゴースト、フレアですが、写真の撮り方によっては雰囲気がでて、写真のプロの方はうまく活用された素晴らしい写真を撮影されていますが、私たちが住んでいるエンジニアの世界では、このゴースト、フレアは「悪」でしかありません。

例えば自動運転で使われているカメラでこの現象が発生し、実在しない物が撮像され、システムが誤って急ブレーキをかけ事故が起きる。(実際に過去あるメーカの車で起きていますね。前方を走っているトレーラに太陽の光が反射し、その光がカメラに入りシステムの誤動作の後、事故が発生し、社会的にも問題になった事故があります。)

また他にも、

産業用ロボットがラインで流れて来る製品をカメラで見て取りに行くときに、実在しないものを誤って見つけてしまい、取りに行くときに他の設備と干渉し、設備が破壊される

と、とにかく悪そのものです。

これらを防ぐ為にはどうすれば良いか。

答えは、レンズのコーティングです。

コーティングの無いレンズは1面辺り約4%の光の反射が起こると言われています。これがフレア、ゴーストの原因にもなり、またその特性のまま例えば10面(5枚)のレンズを光が通過する事を考えると、その透過する光は66%まで減ってしまいます。

明るいレンズを設計しようとすると、収差補正の為構成枚数が増え、表面反射が増加する事で、Fナンバー程に明るいレンズが作れないといった現象が起きてしまいます。

それを防ぐ方法の1つとしては、2つのレンズを重ね合わせる「接合レンズ」という物もあり、明るさを保つ工夫がされてきましたが、フレア、ゴーストも防ぎ、透過率を上げる手段として、コーティング技術があります。

■反射防止コート(ARコート)の役割

反射防止コート(AR(Anti-Reflection)コート)には次の役割があります。

  • 透過率の向上と反射率の低減
  • ゴースト、フレアの低減
  • ヤケの防止

コーティングは様々な方法がありますが、単層コートで、反射率は半分。多層コートでは0.5%以下まで反射を抑える事が出来ます。この反射防止コートをレンズ玉にコーティングする事で、透過率を向上させると同時に反射を防止し、ゴースト、フレアの軽減させる事が可能です。

また、光学ガラスは空気中の水分と反応して、表面の屈折率が変わって青いシミの様になったり、白っぽくなったりする、ヤケと呼ばれる化学的ダメージを受けやすい為、コーティングはその保護としても活躍します。ただ、コーティングしてからでも、水滴がついた状態で放置することは禁物です。

ゴーストの種類

それでは最後にゴーストの様々なパターンについて解説していきたいと思います。

■パターン1

最もポピュラーなパターン。レンズ表面で2回反射した光束が撮像面に結像する事で発生。各面での反射率が数%であり、2回反射の為、極端に強いゴーストとなる事は少ないが、光源が画面外に行くほど入射角が大きくなり、反射率が上がってくる事で、全反射になる可能性がある。

■パターン2

レンズの入射角と反射率の関係は下のグラフのような関係がある。入射角が上がってくると、ある角度から反射率が急激に上がってくる特性があり、100%光を反射する角度を「臨界角」という。

臨界角を超えるような斜めの光がレンズに入った時、その光はすべてが反射されてしまい、それを「全反射」という。全反射が複数回繰り返された光が撮像面に入ると、極めて強いゴーストとして現れる。イメージは下の図。

■パターン3

パターン1同様、2回反射によるもので、撮像面と、NDフィルタの間で発生する反射によって発生するゴースト。NDフィルタは透過率を制御するものである為、逆に反射防止処置がしにくく、その為ゴーストが発生しやすい。

■パターン4

レンズの前に、平面ガラスのようなフィルタを置くと、撮像面で反射した光がフィルタで反射し、そのまま戻され発生する。光源の位置が移動すると、ゴーストも光軸に対し点対象の位置についてまわる。

■パターン5

ゴーストの原理とは異なりますが、レンズ表面についている、ごみや傷に光が当たる事で、二次光源となり、その光が結像してしまう。レンズの表面に傷があると、ごみと同様に映り込みは発生するが、傷により回折を起こして、虹色が現れる事がある。

レンズに関しては下記の記事も記載しておりますので、ご覧いただければ幸いです。

参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識

参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、レンズ構成、レンズのスペックを分かりやすく解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、解像力、MTF、空間周波数、TV解像度を解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、収差、スネルの法則をわかりやすく解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、撮像素子(イメージセンサ)における制約を解説

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