2023年のCESでソニーグループは本田技研工業との共同出資会社「ソニー・ホンダモビリティ株式会社」として2025年に受注を始める新EV車「AFEELA」を発表しました。26年春には北米で、その後日本で発売を予定。AFEELAは何が凄いのか、いろいろな記事で、紹介をされていますが、本記事ではAFEELAの紹介と、そこに隠れたソニーの野望を読み解いてみたいと思います。
CES2023ソニー・ホンダモビリティ発表内容
代表取締役 会長 兼 CEO 水野 泰秀氏が語った内容の中でポイントだけを絞ると次の点でした。エンタメ要素が多く、自動運転、車の性能に関わる内容があまり言及無い事は、少し隠しているのか、あまり触れられていません。まずはソニーの強みのエンタメの強化、車のスマホ化をしていくという流れなのでしょう。
・多様な知で革新を追求し、人を動かす。
・人とモビリティの新たな関係
・モビリティサービスおよびエンタテインメントの新たな価値創出
・リアルとバーチャルの世界を融合
・移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張
・2025年前半に先行受注を開始、同年中に発売予定。デリバリーは2026年春に北米から開始
AFEELAの意味
AFEELAとは次の意味を表すようです。
・Autonomy(進化する自律性)
・Augmentation(身体・時空間の拡張)
・Affinity(人との協調、社会との共生)
簡単な言葉で言い換えると
・Autonomy(進化する自律性)⇒スマホのようにアップデート可能
・Augmentation(身体・時空間の拡張)⇒個別カスタム可能なインテリア
・Affinity(人との協調、社会との共生)⇒ネットワークを通じて、人やインフラと繋がる
という事だと思います。
前述しましたが、始めの2点に関してはCESで言及あり、3点目に関してはV2XやOTAにも関係する内容で興味深いですが、詳細は隠されているように思います。
インテリア
インテリアです。VISION-Sのインテリアとほぼ同じで、そのコンセプトをそのまま持ってきた事が分かります。この部分はソニーの強みで、車内いっぱいに広がるスクリーンを使って、映画、ゲーム等のエンタメコンテンツを存分取り込む事が伺えます。
AFEELAのハンドルは上の写真のようにレクサスで採用されているような仕様です。
レクサスは、ステアリングホイールの上部にドライバーモニタリングシステムが付く関係でこうしたのだと思いますが、AFEELAの方も同様、ハンドル付近にドライバーモニタリング用のカメラが付いている為(下図)、このようなハンドルの形になっているのでしょうか?それとも将来的な自動運転を見越して、丸いハンドルからの離脱の為、こうしたのでしょうか?
AFEELAの車内センシングは下記。ドライバーモニターを始め、ソニーが得意なToFセンサ―が多数使われています。それぞれの役割は次の通りと思われます。
・Driver Monitoring Camera
ドライバーの脇見、眠気の検知など、NCAPやヨーロッパの法規への対応や個人認証用途。ドライバーモニターに関する詳しい用途は下記も参照お願いいたします。
参考:ドライバーモニタリング用カメラの仕様【自動運転時代には必須】
・In cabin camera
後部座席を向いているカメラは、後部座席の状態をスクリーンに写したり、忘れ物検知への用途が考えられます。また、フロント助手席についているカメラは体格等を検知して、シートやステアリング、音響の自動調整をするようです。
参考:【次世代】RGB-IRイメージセンサ―とAIを活用した、車室内カメラ
・ToF camera
フロント座席についているToFは、スクリーン等の操作で触る事なく操作する為のジェスチャ検知の可能性が高いです。後部座席も同様、スクリーンを操作するジェスチャ用と思いますが、それと同時に配置位置からして、死角無く、車内の状態をセンシングする為につけられ、置き去り、置き忘れ防止の為にも使われる可能性はあります。ToFの詳細は下記も参照お願いいたします。
参考:ソニーも狙っている、次世代センサ、ToF(Time of Flight )センサの原理説明
社内外のセンサーをつかったコンテンツとして、ARも視野に入っています。ドライブ中にナビと連携した食事処の表示や、目的地までの道のりをAR重畳といった、分かりやすいコンテンツです。この辺りも車のスマホ化。という所で、今発売されている車とは一味違いますね。
自動運転
気になる自動運転の部分ですが、CES2023年の報告では少し拍子抜けで、
特定条件下での自動運転レベル3(システムがすべての運転操作を一定の条件下で実行する状態)を目指し、市街地などでの運転支援機能レベル2+の開発。という事です。
自動運転のレベルに関する詳細は下記参照
参考:自動運転車のレベルと、活用されるセンサ技術4種、課題も含め紹介。
これらの自動運転レベルに関しての内容はすでにホンダから発売されているホンダのレジェンドと同じで、個人的にはLevel4まで視野に入れている事を期待していましたが、少し期待外れでした。
ただし、今回発表されているAFEELAのセンサーは全部で45個という事で、レジェンドに対し、かなりの数が追加されています。
レジェンドのセンサーは下の図の通り合計12個
2つの違いとしては、
・AFEELAはサイドにつけられたセンサーが多い
・AFEELAはLiDARの数が少ない
という違いがあります。LiDARに関する記事は下記参照
参考:【徹底解説】LiDARとは?自動運転、スマホ、あらゆる場面で今後活躍必至。
これらの、AFEELAとレジェンドのセンサーの違いから読み取れる事として、
1.AFEELAは自動駐車の機能を検討している可能性が高い
2.AFEELAのLeve3の自動運転は、渋滞時のみといった低速の特定条件に限定する可能性が高い
という事が予測されます。
全周取り付けられたセンサで車の全方向をくまなくセンシングしていますので、自動駐車、セキュリティ、個人認証。この辺りでの使用用途を検討していると思われる一方、LiDARが前方しかついていないという事で、前方のセンシングの機能はレジェンドより弱い事が分かります。
VISION-Sでは全周LiDARを付けていたのに対し、今回の変化はコストの理由なのか、Level3以上はまだ難しいという判断なのか分かりませんが、ダウングレードしている事は残念に思います。
ソニーの野望
今回のソニー・ホンダモビリティの中でのソニーの本当の目的を考察したいと思います。
下の図のモビリティビジネスのピラミッドの中で、これまでティア2として、センサー部品を供給していた立ち位置から、ホンダと組む事によって、①②のモビリティサービスプロバイダ、サービスソリューションプロバイダの立ち位置を狙っているのが今回のホンダとの業務提携の目的ではないかと思います。
今後自動車産業の系列が崩れ、従来ピラミッドの頂点だった完成車メーカの存在感は薄れ、モビリティの業界においては、モビリティサービスを作る会社が最も上位に立つ構図となります。
センサ―販売の部品屋(物売り)から脱却し、ホンダと組むことによって、ソリューションプロバイダ、モビリティサービスプロバイダとしての基盤と地位を確立し、そのプラットフォームの構築とリカーリングビジネスをしていく事が、ソニーの本当の狙いではないでしょうか。
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