自動運転車のレベルと、活用されるセンサ技術4種、課題も含め紹介。

自動運転車のレベルと、活用されるセンサ技術4種、課題も含め紹介。

自動運転車と聞くと、手放しで運転できる車の事を想像されるかもしれませんが、自動運転車には取り決められたレベルがあり、そのレベルごとに出来る事が変わってきます。昨今様々な自動車メーカがリリースしている車の多くは「Level2」の自動運転車であり、そこには様々なセンサが取り付けられ、車の周りをセンシングしています。

センサと聞いてピンとくるエンジニアの方もいると思いますが、多くのセンサはスマホでも使われており、スマホで培った技術を車で応用する。といった流れですので、車載用に全く新しいセンサを各社開発しているのではありません。そうすると、昨今話題のApple CarやソニーのVISION-Sのようにすでに民生機器でセンサの扱いに慣れているメーカが自動車業界に入り込んでくる意図も分かってきます。

本記事では、自動運転車のレベルの説明と、車についている主要センサ4種についての解説、自動運転実現に向けての課題も解説していきたいと思います。

スポンサーリンク

自動運転のLevel解説

ご存じの方も多いと思いますし、他の記事でも多く記載されている内容ですので、ここではさらっと説明させて頂きたいと思います。自動運転のレベル分けは次の表のようになっております。重要なポイントは「責任」の欄です。Level2までは責任が「人」に対し、Level3以上は責任が「システム」となります。つまりLevel3以上は事故発生時の責任は車両メーカになる為、特に日本では、Level3以上の車両を出す事に慎重になっています。この記事を書いている2021年11月時点では国産車ではホンダのレジェンドのみがLevel3を達成しており、その他日産、トヨタのシステムはLevel2となっています。

Level概略説明備考責任走行領域
0旧来の車運転の自動化なし適用外
1「運転支援機能装備」車両運動制御のタスクを限定的に実施
例:前の車について走る
  車線からはみ出さない
  自動で止まる(自動ブレーキ)
※衝突被害軽減ブレーキは2021/11には新型車への搭載義務化、2025/12月にはすべての車両への搭載が義務化予定
限定的
2「部分的な運転の自動化(ハンズオフが可能)」特定条件下での自動運転機能装備
例:車線を維持しながら前の車について走る
  高速道路において、遅い車を追い越す
  高速道路の合流を自動で行う
限定的
3「条件付き自動運転(アイズオフが可能)」限定条件下でシステムがすべての動的運動タスクを実行する。ただし、作動が困難な場合はドライバが即座に応答しなければならない。(つまり、車両主導の完全自動運転機能が入っているが、システムが困った時はドライバにすぐ交代する必要がある、その為、ドライバは寝ていてはいけなく、すぐ運転が出来る状態でないといけない)  システム限定的
4「高度運転自動化(ブレインオフの水準)」限定条件下でシステムがすべての動的運動タスクを実行する。Level3との違いは緊急時であってもドライバが運転を引き継ぐ必要はない。「限定条件下」での自動運転である為、限定領域外で走行する場合に備え、ハンドル、アクセルと搭載した車両と、限定領域内のみで走行する2タイプの車両が想定。システム限定的
5完全自動運転いかなる場所、いかなる状況下においても自動運転システムがすべてのタスクを担う完全自動運転。ハンドル、アクセルはもういらない。システム限定なし

参照:自動運転に必要な車載カメラモジュールの5つ役割【自動運転には必須】

参照:自動運転に関わる難しい英語の略語30個を、分かりやすく解説します

参照:イーロンマスクが率いるテスラの、車だけではない驚くべき事業戦略。

スポンサーリンク

自動運転で利用されるセンサ技術4選

自動運転に使われている各種センサ技術は次の4点となります。

  • カメラ
  • ミリ波レーダ
    • 搭載場所:フロントグリル内側、下部に設置。
    • 60GHz以上の高周波の電波帯を利用して、前方の車両や障害物を検出。79GHzミリ波レーダは解像度も高く、小さい物体も検出可能。
  • 超音波センサ
    • 搭載場所:フロントやリヤパネル。
    • 短距離のみの対応であり、駐車時の障害物検出に利用される。低コストで実現可能。周辺の障害物を超音波をつかって検出
  • レーザーレーダ
    • 搭載場所:フロントグリル内側、下部に設置。
    • レーザー(光)を利用して、非常に高解像度で周囲の物体を認識。将来、実装する事が可能なセンサだが、現状ではまだコストが高い。

参考:安全機能として車に搭載されている、ステレオカメラの役割と距離測定の原理

参考:【ホンダ N-WGN】ホンダセンシングの機能一覧と実車レビュー、欠点の紹介

次にそれぞれの課題について記載していきたいと思います。これらのセンサは万能ではなく、得意な部分と不得意な部分がそれぞれある為、それを補う形で各種のセンサが取り付けられています。

  • カメラのセンシングに対する課題
    • 夜間などの十分な光量が無い場合に認識制度が低下する懸念がある。
    • 画像処理の処理時間がかかる為、瞬時の対応が必要な場合に遅延が生じる可能性がある。
  • カメラの車への搭載に対する課題
    • 実用化が進んでいるが、カメラの設営部分に汚れや水滴が付着した場合に認識精度低下の懸念がある
    • 激しい雨や霧等の場合において、認識精度が低下する懸念がある。
  • 超音波センサのセンシングに対する課題
    • 認識範囲が狭い(10cm以下程度)
    • 対象物の存在が分かる程度であり、解像度が低い。
  • 超音波センサの車への搭載に対する課題
    • 現在は車のバンパへ埋め込まれている物が多く、低コスト、車へ搭載する時の課題は無い
  • ミリ波レーダのセンシングに対する課題
    • 高い解像度により小さい物体を検出する技術も実現されている。
    • カメラのような画像は得られない為、白線などの色の違い、物体の認識には不向き。
  • ミリ波レーダの車への搭載に対する課題
    • 電波を照射する為、電波発信部の表面を金属面で覆う事が出来ない。結果搭載場所が制限される。
  • レーザーレーザのセンシングに対する課題
    • 細かい粒度(ミリ単位)で物体の形状を把握する事が可能だが、色の識別は出来ない。
  • レーザーレーダの車への搭載に対する課題
    • 開発途上技術である事もあり、高コスト。
    • またサイズも大きく、搭載位置の工夫が必要

自動運転実現の課題

最後に、自動運転を実現する事そのものの課題に関して少し触れたいと思います。技術だけでなく、社会的な背景や、日本独特の課題、心情といったように、多種多様な課題があります。ただし私としてはこれらの課題を乗り越え、新たな時代が到来する事を楽しみにしています。

  • 自動運転とドライバの運転行動に関する課題
    • 自動運転機能動作時の運転手の注意力低下の懸念。自動運転のLevelで記載の通り、Level3までの自動運転は、ドライバと車間で、運転の主導権を切り替える必要があるのですが、慢心の為、眠ってしまい、運転交代が出来ない状況になるという課題があります。
    • Level3以下では、悪天候や道路環境が悪い時も同様、運転操作を車両からドライバへ渡す必要がありますが、上記同様、運転交代出来ない状況(例えば運転席から離れるなど)が起こりえる、という課題があります。テスラの事故の多くはこれですね。
  • 事故発生時の責任に関する課題
    • Level2までは、事故発生時の責任はドライバであるのに対し、Level3以上は事故発生時の責任は車両側に課される。このため各日本の自動車メーカはLevel3以上を出す事に対し、消極的にならざると得ない状況になっていると思います。
  • 社会受容性の課題
    • 交通ルールを守るだけでなく、現在の車社会で人が実施している、細かな気遣いや人間らしい運転が実現できないと、社会の受容性を受け入れる事が難しい。
    • また、例えば、夜間、無人のバスに1人だけで乗っている時に、知らない人が乗ってきた時の恐怖感。今までは運転手がある意味セキュリティの代わりになっていたものがなくなる事に対する、心理的な対応が必要。

このように、自動運転には、技術面以外にも様々な課題があります。ただ、未来に向かって走っている事には違いはありませんので、これらの課題をクリアして、新しい未来が作られていく事を期待しています。

記事が気に入って頂けたら、クリックして頂けると嬉しいです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました