エンジニア視点で考察。ドライブレコーダーのおすすめ2021年版

エンジニア視点で考察。ドライブレコーダーのおすすめ2021年版

事故の記録、あおり運転、当て逃げ、駐車中の監視ととても便利な機能が搭載されたドライブレコーダーですが、様々なメーカからいろいろなタイプの物が発売されており、何を選べばよいか悩んでいる方も多いと思います。そんな方向けにエンジニア目線で考察した、2021年に発売されている、ドライブレコーダのおすすめ仕様を解説していきたいと思います。

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ドラブレコーダのおすすめタイプ

ドライブレコーダのタイプは大きく次の3タイプがあります。

  • フロントのみのタイプ
  • フロント+リアのタイプ
  • 360°のタイプ

さぁ、ドライブレコーダを買おう!と思い立ってオートバックスやイエローハットに行った時に、思ったより種類が多く、どんな種類の物を買えばよいか分からない、という壁に当たります。この壁に当たった時は、自分がドライブレコーダを購入しようとする目的に立ち返りましょう。また、下の交通事故のデータも役立つかと思いますので、記載しておきます。見て分かるようように、追突事故と出合い頭事故がダントツに多く、続いて右左折時。この3種の事故の割合が最も多い事が分かります。

ここから考察すると、下記の目的別にそれぞれお勧めのタイプは次のようになります。

目的:事故発生時に身を守る

おすすめ:フロント+リアのタイプが〇

フロントだけのカメラでは、後方から追突された時の撮影が出来ない為、上のデータによると、事故時、身も守れる確率は約50%という事になります。つまり、事故時に身を守る為には、フロントのみのタイプでは心もとない事が分かります。では360°のものはどうかというと、こちらも後方はナンバープレートを写すような事は出来ないと思った方がよいかなと思います。理由はカメラを室内に取り付ける為、下の写真のように、後方はかなり小さく映る事になりますし、車両が近づいたらナンバープレートは見えない状況です。カメラの解像度が高ければ可能性がありますが、少なくとも後方だけで2Mピクセルは必要な為、全周を考えると8M以上のイメージャを使っているモデルであれば撮像出来る可能性はあります。

目的:あおり運転から身を守る

おすすめ:フロント+リアのタイプが〇

あおり運転の対策をしたいという方、こちらも、上で説明したように、360°のカメラの場合は、後方遠い距離まで撮像する事が困難な場合が多いです。ですので、あおり運転の対策を目的と考えられている方は、後方用のカメラをしっかりつけた方が良いと思います。後方だけのカメラというモデルは無い為、フロント+リアのタイプを推奨させて頂きたいと思います。

目的:駐車時の当て逃げ

おすすめ:360°のタイプが〇

目的が駐車時の当て逃げの場合は、全周もれなく見える対応が良い為、360°の物がお勧めですが、上記記載のように、各方面の解像度はイメージャの画素数の割り算となりますので、(例えば2Mピクセルのイメージャで、360°カメラの内、前方120°に割り当てられるピクセル数は1/3の0.66Mになってしまう)8Mくらいの解像度の物がおすすめです。

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視野角とカメラ解像度

ここが一番悩む所ではないでしょうか。画素数、視野角どちらも大きい事に越したことはないです。ただしむやみに性能の高い物を選ぶと値段が上がってしまいますので、これも用途に応じて選んでいきましょう。それぞれが大きくなる事による利点は次の通り。

■画素数UP:解像度が上がる為、遠くのナンバープレートの数字までしっかり見える

視野角UP:出会いがしらの事故時の撮影範囲が広くなる。

ここでもう一度、上で記載した事故の確率を見てみましょう。出会いがしらの事故がかなりの割合を占めており、この時にしっかり録画できるかどうかという観点で見ていきます。

1つの基準として、水平画角120°+200万画素の組み合わせから考えます。

まず角度から、下にイメージを記載していますが、おおよそ120°あれば横から突っ込んできた車に対し、自動ブレーキが作動する角度と言われています。最近の自動ブレーキを踏む為のカメラも多くが120°近辺です。言ってみればこの角度があれば、ぶつかる前から十分突っ込んでくる車をとらえられる。という事です。

次に解像度です。よくフルHDと記載があるドライブレコーダが売られていると思いますが、この解像度は1920×1080です。ドラレコで前方者のナンバープレートを見ようとすると、レンズの性能にもよりますが、50ピクセルくらいの画素数が必要です。下の例では、フルHD+120°のドラレコの例ですが、

右前方の車のナンバーが約65ピクセルとなります。

解像度がもしHDの場合、カメラの解像度は1280×720、その時ナンバーのピクセル数は、単純に水平のピクセル数が減る分だけ、(1280/1920)*65=43 となり65→43ピクセルに下がってしまいます。

またフルHDのまま、今度は水平画角度が170°になった場合、同様角度が広くなる分だけ、(120°/170°)*65ピクセル=45となり、65→45ピクセルに下がってしまいます。

車が近づけばナンバーのサイズも大きくなるため、見えてきますが、少し遠くなったら見えなくなってしまいます。つまり、解像度と画角度はとても関係が深い物で、水平120°+フルHDを基準に、角度が上がってこれば来るほど、周囲は見えるようになりますが、ナンバープレートを写すピクセル数が減り、解像度性能が下がる。という事になります。

結論としてのお勧めは、110°~120°+フルHDもしこれ以上に角度を上げる場合は解像度も合わせてあげる事を検討すると良いと思います。

夜間撮影

次に重要な夜間での撮影です。これは着目すべき仕様は次の2点です。

■イメージセンサ:ソニー製の一択。ダントツに夜間性能が良い

レンズF値:小さければ小さい方が明るい

夜間の事故が撮影できなかったら意味ないですから、夜間性能は非常に重要です。その中で、イメージセンサはその性能の大部分を占めますが、これはソニー製の一択で良いと思います。夜間性能はそのセンサよりも優れています。よくパッケージにソニー性イメージャ仕様とうたわれている物がありますがその中でもSTARVIS搭載という物を選択するのが良いと思います。

次にF値です。これは聞き慣れないかもしれませんが、レンズの明るさを示す指標です。明るさは1/F^2で比較すると、おおよそ明るさの違いが分かります。例えば、

F2.0の場合、1/2^2=0.25

F1.6の場合、1/1.6^2=0.39

よって、F1.6はF2.0の約1.56倍明るいレンズだという意味です。まとめると下記です。

  • ソニーイメージャ+F値が低いレンズ=◎
  • ソニーイメージャ+F値が高いレンズ=〇
  • ソニー以外のイメージャ+F値が低いレンズ=〇
  • ソニー以外のイメージャ+F値が高いレンズ=✖

参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、レンズ構成、レンズのスペックを分かりやすく解説

HDR

次はHDRです。WDRともいわれます。

HDR : High Dynamic Lange

WDR : Wide Dynamic Lange

で、簡単に言うと、暗い所から明るい所までしっかり撮像する機能です。ドライブレコーダにはこの機能も必須と思った方が良いかなと感じています。特に顕著にこの機能が効くのが、トンネル内や夜間の対向車のヘッドランプの光です。ピンポイントに明るい被写体がカメラに入ると、その部分は白飛びし、それ以外の部分が真っ暗となり、結果その状態では、事故の状況が分からない。という事になってしまいます。

トンネルの例は下記。左がHDR無。右がHDR有ですが、左の方はトンネルの外が真っ白で見えなくなってしまう事が分かると思います。

HDRに関しては下記の記事も参照頂ければ幸いです。

カメラの性能を決める、ISP(イメージシグナルプロセッサ)の機能と信号処理

フレームレート

フレームレートとは動画の1秒間のコマ数を表す数値単位ですが、フレームレートは2つの観点で重要です。

■ポイント1:信号機をしっかり撮像する為に重要

意外と盲点ですが、カメラで信号機を撮像する時の注意点として「同期」という言葉があります。日本の電気が交流になっている事はご存知だと思いますが、東日本50Hz、西日本は60Hzの交流です。で、LED信号はどのように動作しているかというと、50Hz、60Hzの周期で点灯、消灯を繰り返しています。つまり、東日本では1秒間に100回の点灯、西日本では1秒間に120回の点灯を繰り返しており、人間はそのスピードに付いて行けない為、常時点灯しているようにみえるだけです。

それをデジタルカメラで撮像すると、例えば30fpsのカメラは1秒間で30回撮影し、それを連続的に記録しますので、タイミングによっては下の図のドラレコ2のタイミングのように、シャッタをきるタイミングがLED信号の消灯タイミングと同期する事(同時になる事)で、LED信号が消えて見えるという現象が発生します。(※厳密には、周波数は少しづつ変わっていくのと、シャッタも切る時間に長さがあるので、厳密には少し異なります)

それを回避する為には、50Hz,60Hzを割れる数字になっていないフレームレートの製品を選ぶか、もしくは、フレームレートは同期するスピードだとしても、LED信号対策済となっている製品を選ぶ必要があります。対策とは、30fps⇒29fpsといったように微妙にずらすか、シャッタを切る時間を伸ばして、消灯と点灯の両方のタイミングが必ず1フレームに入るような対策をしているはずです。

■ポイント2:ブレずに撮像する為に重要

例えば、時速100キロで走行中の車において、フレームレート10fpsのドライブレコーダーを使用した場合、1秒間に約27.7m進む車を10コマ撮影することになります。つまり、1コマ1コマの間隔が2.7mとなります。この場合、車が2.7m進む間にどのようなことが起こったか見落としてしまう可能性もあります。そのため、より証拠として使用できる映像を録画するためにも、フレームレートの数値は高い方が良いと言えます。早ければ早い方が良いですが、上記の例でいうと、30fpsでは時速100キロ時、1コマの間隔が1m以下になる為、30fps前後またはそれ以上を選ぶのが良いと思います。

その他機能

  • ナビ連携

他機能として、各メーカ事に様々な物がありますが、もしナビが対応していれば、ナビ連携が出来るモデルが便利かなと思います。ドラレコに付属のモニターはすべて小さいです。画面を表示したり、設定を入れたりする際に、ナビの画面を使えるのは非常に便利です。

  • SDカード

こちらは注意点となりますが、SDカードは車載向けの物を使うようにした方が良いです。民生品で安い物が売っておりますが、車の中の環境には適合していないものがほとんどの為、壊れてしまいます。折角ドラレコをつけているのに、事故した時にSDカードが壊れていて録画できなかった。という事が無いように、純正の車載向けのSDカードを活用される事をお勧め致します。

  • 安全機能

前方追突警告や車線逸脱警告等の安全機能が搭載されている物があると思いますが、正直必要ないと思います。理由は精度が高くない為(ASILに対応した物ではない為)実際にはあまり役立つものではありません。

ASILに関しては下記参照頂ければ幸いです。

難解な規格、自動車の機能安全、ISO26262、ASILを超簡単に解説します

まとめとおすすめドライブレコーダ

以上をまとめると、用途によりますが、事故から身を守るという観点で考えた時にお勧めのドラレコは下記の仕様の物となります。

  • タイプ:フロント+リアのタイプ
  • 解像度:フルHD
  • 視野角:120°前後
  • イメージャ:ソニー製、STARAVISが尚よい。ソニー製でない場合はレンズF値をF2.0より小さく
  • F値:F2.0以下
  • HDR:有
  • フレームレート:30fps前後(LED信号対策済の物)
  • その他:ナビ連携出来た方が便利

上記条件に合致したモデルはいくつかありますが、代表的なモデルを下記に示します。

■ナビ連携モデル

■ナビ連携でなないモデル

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