人間はミスを犯し、機械は故障する。安全確保に挑む、20種類のニューアプローチ指令

世界の製造業、そこで作られた製品は、機械や製品を使用する際の安全性の確保を、現場の作業者や、製品の使用者、つまり「人」に大きく依存しています。

ここ数年で多発される様々な産業事故、交通事故を見てみても「人」に依存した従来型の「災害ゼロ」「事故ゼロ」の考え方では、限界があります。

そこで、昨今国際的な安全を構築する考え方として、「人間はミスを犯すもの、機械は故障するもの」という事を前提とした、本質安全を考える風潮が強くなっています。

そこでヨーロッパ市場に目を向けると、

EU加盟国がEU統合前から独自に設けていた、製品の安全性や品質に関する規格・規則を平準化し、EU域内における安全な製品の自由な流通を目的とし、1985年に「技術的調和と基準に関するニューアプローチ」が採択されました。

その考えに基づいて、製品の安全性や、品質などを定めた指令類を「ニューアプローチ指令」と呼ばれています。

本記事では、製品を開発設計するうえで非常に重要な本、ニューアプローチ指令について解説し、主な指令20種類の概略を説明したいと思います。

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ニューアプローチ指令

繰り返しになりますが、EU内で各製品を安全に流通させる為、1985年に、製品の安全性と品質に関する規制を作り、それをEU内共通の安全・品質基準として定められました。

製品の安全性、品質などを定めた指令類を「ニューアプローチ指令」と呼びます。

その代表的な物に「機械指令」「低電圧指令」「EMC指令」があります。

この「ニューアプローチ指令」は、安全などに対して遵守すべき要求は述べられていますが、それをクリアする為の具体的な技術基準や手法は述べられていません。その為、製造者は、各指令に付随する、「整合規格(EN規格)」の一覧を参照し、必要な規格を選択し、その内容に合うように、設計、製造する必要があります。

製品がどの規格に該当するかは、製造者が判断する必要があります。

もちろん1つの製品に複数のニューアプローチ指令が適用される場合もあり、例えば産業用機械の場合は、機械指令への適合だけでなく、低電圧指令やEMC指令にも適合しなければいけない場合もあります。

上記 「機械指令」「低電圧指令」「EMC指令」も含め、代表的な指令20種の概略を説明していきたいと思います。

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主なニューアプローチ指令20種

機械指令

産業用ロボット、工作、建設、土木機械類等、可動部をもつ機械類が対象。下記参照

>CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。

低電圧指令

交流(AC)50-1000V、直流(DC)75-1500Vの範囲で動作する電気/電子機器が対象。下記参照

>CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。

EMC指令

電磁波、妨害波を与える機器、または妨害によって影響を受ける電気/電子機器一般が対象。下記参照

>CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。

防爆(ATEX)指令

防爆用電気機器/システムが対象

可燃性粉塵、可燃性ガス、ミストや蒸気の環境下や隣接した環境で使用される機器やシステムは本指令に適合されなくてはならなく、この要求は、安全装置、制御装置、調整装置、および保護部品、装置、システムを含むすべての防爆機器およびシステムに適用されます。

R&TTE指令

公衆回線に接続する有線及び無線機器が対象

無線機器・電気通信端末製品が対象であり、無線を用いて送受信を行う機器や通信回線に接続される端末機器に適用されます。

製品同士の電波干渉による混信や安全性などを考慮した指令内容になっています。

圧力機器指令

圧力機器で特定の条件を超える物が対象


0.05MPaG以上の圧力で使用する機器の内、カテゴリⅠ(圧力と内容積で決まる)以上に該当する機器が対象の指令です。

圧力容器指令

最大許容圧力が0.5バールを超える圧力機器及びアセンブリが対象


指令の中では、圧力装置は容器・配管・安全装置および圧力部付属品であると定義されており、それぞれに対する設計、製造の適合性評価をするための要求事項を満足する必要があります。

昇降機(リフト)指令

エレベータなどが対象

昇降機指令の対象となるのは、建築物及び建物に恒久的に使用する、人員用または荷物用エレベータ、及び指令付属書に記載されたエレベータ用安全部品となります。

医療機器指令

医療目的で人体に使用される機器/器具が対象

体外診断用医療機器指令

対外での診断用機器(血液検査機器など)が対象

体外診断用医療機器には、疾病の診断、健康状態の監視、治療の進捗の監視のために人体から採取された検体(組織、血液、尿、等)の検査に用いることを目的とした、試薬、試薬製品、較正物質、コントロール物質、キット、用具、器具、装置、およびシステムが含まれます。

体外診断用医療機器の具体例は次の取りです。
• 肝炎検査またはHIV検査
• 臨床化学
• 凝固検査システム
• 尿試験紙
• 妊娠検査
• 糖尿病のための血糖値監視システム
• 医学検体用に特に製造された容器

能動体内埋込医療機器指令

心臓ペースメーカなどが対象

能動埋め込み医療機器(AIMDD)は、診断または治療のために、完全にまたは部分的に人体に導入され
そのまま留置されることを目的とした能動医療機器のことです。
AIMDDに含まれる医療機器には様々なものがありペースメーカー、除細動器、輸液ポンプ、心室補助装置および同システム、人工内耳、および神経刺激装置などが挙げられます。
AIMDDは長期にわたって人体に直接接する形で留置される設計になっていますので患者の健康や安全を守るための厳格な規格や要求事項に従う必要があります。

ガス機器指令

ガス機器などが対象

ガス燃焼装置に関連する規制であり、欧州市場に上市する際に満たさなければならない必須基本要件を含んでいます。

玩具安全指令

14歳未満の子供用玩具類が対象

14歳未満の子どもが使用することを目的として設計されたすべての玩具に適用されます。「遊戯」目的のみの商品だけでなく、他の機能が備わった商品も含まれます。たとえば、テディベアが付いたキーリングや、ソフトな素材が詰められた動物の形のバックパックなど。子どもにとって魅力的で遊び道具になる可能性がある商品や子ども向けに販売されている商品は、指令の対象となる玩具とみなされます。

保護具指令

保護用ヘルメットなどが対象

個人用保護具(Personal Protective Equipment: PPE)は、「安全衛生に関わる1つ以上の危険からの防護を目的として個人が装着または保持する機器」と定義されており、具体例は次の通りです。

  • 耳の保護具
  • 呼吸器の保護具
  • 目の保護具
  • 頭の保護具
  • 保護靴
  • 防護手袋
  • 防護服
  • 高視認性作業服

計器指令

家庭における流量系などが対象

非自動重量計指令

体重計などが対象

非自動重量計とは、物体の質量をその物体に作用する重力を利用して計る計量器であって、計量値を得るまでの過程において、静止状態において計量を行うものをいう。

レジャー用ボート指令

スポーツ、レジャー用船舶が対象

レジャー用船艇(スポーツやレジャー目的で作られた2.5-24mのボート)と、個人用船艇(5m以下の個人用ボート)、船外機などが含まれ、個人用船艇やレジャー船艇に使用される推進エンジンが排出する排気ガス(CO、HC、NOx、粉じん等)と騒音も規定されている。

民間用爆発物指令

民生用途の爆薬などが対象

ケーブルカー指令

ロープウェイ、ケーブルカーが対象

花火指令

エアバックなどが対象

こうしてみると、ほとんどの身の回りの製品がニューアプローチ指令に含まれていると感じます。こうして安心安全を守る為に、エンジニアは日々開発しているのですね。

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