CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。

CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。

製品開発を行う中で、絶対に押さえる必要がある「CEマーキング」とは?を解説する為に、ニューアプローチ指令(機械指令、低電圧指令、EMC指令)について、出来るだけ分かりやすく解説したいと思います。本記事を読めば、規格の目的、CEマークとは何、何をしなければいけないのかが分かるように組み立てていますので、是非ご覧ください。

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はじめに

先進国を中心とした、各国、地域は、労働安全機械安全に関して、多くの法令をもって運用しています。その目的は次の通りです。

目的:機械設備や使用材料などを安全にし、労働者、その機器の使用者を、障害、健康被害から守る事

その為、IECやISO規格を作り、各国の基準を定め運用しています。

本記事では、これらの法令、指令について、出来るだけ分かりやすく説明していきたいと思います。

昨今各企業でこういった法令が守られていなく、問題が明るみになっている企業も多くあります。これらの不正をする事によって、使用者の健康被害をもたらす可能性もあり、許せない行為です。

しかしながら、実際の実際の物づくりの現場では、やれコストダウン、やれ業務の効率化だと言われ、法令順守にコストと時間がかかる事が分からない上司も多くいます。

そういった上司がいる企業はすぐに転職しましょう。

転職に関する記事はこちらから↓

ビズリーチの活用とリクルートエージェントとの比較。年収を上げる方法と、オファーの実例紹介

繰り返しになりますが、目的は「 機械設備や使用材料などを安全にし、労働者、その機器の使用者を、障害、健康被害から守る事 」絶対に守らないといけないルールとなります。

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CEマークの概略

CEマーク

EU(ヨーロッパ連合)では、多くのEC指令が発行されています。EC指令とは規格です。CEマークとはその指令に適合している事を示すための証となり、このマーク無に、EU内に製品を流通させる事はできません。

EC指令の中で特にメジャーな物の1つとして、「ニューアプローチ指令」と呼ばれる指令があり、ニューアプローチ指令の対象機器には私達の身の回りにある、家電製品や自動車部品、他にも工場内で使われる産業機器があります。

これらの製品をEU内で自由に流通させる為には、対象製品が、ニューアプローチ指令に適合している事を製造者が宣言し、その証として製品に「CEマーク」を張り、流通、販売を行う必要があります。

私達に身の回りにある製品をよく見てみましょう。ほとんどの製品にこのマークがついている事が分かると思います。

まとめると、製品開発をする際には次の手順で各指令に準拠する必要があります。

  1. EUへ輸出するかどうか考える。する場合はEC指令に適合する必要あり
  2. 開発する製品がニューアプローチ指令の中の、どの指令の対象となるのかを確認
  3. 該当する指令の規格を調査
  4. 各指令に準拠するように製品開発を実施
  5. 試験を実施し、試験に合格できたという証拠を残す(第三者機関の立ち合いを行う場合もある)
  6. 試験合格後、規格適合を宣言する為、CEマークを製品へ取り付ける
  7. EU諸国へ出荷

私達の身の回りにある製品である民生機器、自動車製品、または工場の中にある産業機器等の製品をターゲットとした時、ニューアプローチ指令の中で次の3点がメジャーな指令となる為、そこをピックアップして解説します。

  • 機械指令:産業用ロボット、工作、建設、木工機器など可動部を持つ機械類
  • 低電圧指令:交流50-1000V、直流DC75-1500Vの範囲で動作する、電気/電子機器
  • EMC指令:電磁波妨害を与える機器、または妨害によって影響を受ける電気/電子機器

上記以外にも複数種ありますので、別の記事でまとめて記載したいと思います。

ニューアプローチ指令

EU内で各製品を安全に流通させる為、1985年に、製品の安全性と品質に関する規制を作り、それをEU内共通の安全・品質基準として定められました。

製品の安全性、品質などを定めた指令類を「ニューアプローチ指令」と呼びます。

その代表的な物に「機械指令」「低電圧指令」「EMC指令」があります。

この「ニューアプローチ指令」は、安全などに対して遵守すべき要求は述べられていますが、それをクリアする為の具体的な技術基準や手法は述べられていません。その為、製造者は、各指令に付随する、「整合規格(EN規格)」の一覧を参照し、必要な規格を選択し、その内容に合うように、設計、製造する必要があります。

製品がどの規格に該当するかは、製造者が判断する必要があります。

もちろん1つの製品に複数のニューアプローチ指令が適用される場合もあり、例えば産業用機械の場合は、機械指令への適合だけでなく、低電圧指令やEMC指令にも適合しなければいけない場合もあります。

ニューアプローチ指令に関して詳しくは下記の記事をご参照頂ければと思います。

人間はミスを犯し、機械は故障する。安全確保に挑む、20種類のニューアプローチ指令

CEマーキング

ニューアプローチ指令が適用される製品は、該当する指令と、指令ごとに必要となるすべての規格要求に適合している事を宣言する証として「CE」マークを張る事が規定されています。そうする事で、EU内で自由に流通できるようになります。

逆に言うと、CEマーキングが付いていない場合はEU諸国では、輸出、販売、流通する事が出来ません。

CEマークは、第三者機関の認証マークとは異なり、指令及び規格要求に適合している事を、製造者が宣言し、自己宣言として製品に張る物です。

また、CEマークは1つの製品に適用されるすべてのニューアプローチ指令と、その指令に適用される整合規格の要求を満たしている事を示す為、例えば対象製品が、機械指令、低電圧指令、EMC指令の対象になる場合は、すべての規格へ適合しなければCEマーキングを行う事が出来ません。

CEマーキングは原則製品に張りますが、製品が小さすぎる場合は、梱包箱や添付文章へつける事も認められています。

新機械指令

新機械指令(2006/42/EC)はニューアプローチ指令の1つで、主に工作機械や成型機など、産業用機械類に対する自由な流通を目的とした指令です。一般的には、機械指令、あるいはMD(machinery direct)と呼ばれています。今までの旧機械指令に代わり、2009年12月29日から適用されています。

機械指令の内容は、全文、本文、付属書の構成となっており、安全を確保する為の「必要要求事項」が述べられており、これらの要求を満たす事が求められます。

機械の製造者は、この要求に従い機械に適合する整合規格(ISO)を選択し、技術的要求をクリアする事が必須条件です。

機械指令で要求されている主な「必須(安全)要求事項」の概略は以下の通りです。

基本としては、リスクアセスメント及びリスク低減方策を実施する事が条件となり、その上で、下記の要求があります。

  • 制御システムの安全性・信頼性(始動、停止、緊急停止を含む)の確保
  • 機械的危険源に対する保護
  • ガード及び保護装置に対する要求
  • その他の危険(電気、騒音、有害材料など)に対する保護
  • 保守の際の安全確保
  • 残留リスクに対する対応。

また、機械指令でいう「機械」の定義はつぎのような物を言います。

互いに連結し、組み立てられた構成部品、装置の集合体で、その中で1つは制御され、駆動するもの。つまり、部品などがある目的の為に組み立てられた可動部のある製品。ただし、可動部が直に人や動物の力を利用する製品を除く。

上記定義以外にも次のような物も機械に含まれます。

  1. 交換可能な装置
    • 機械の機能へ変更したり、新機能を持たせるために追加して組み合わせて使用する装置。つまり拡張機能を持たせるためのオプションもすべて機械に含まれます。例えば産業用ロボットの場合は、ロボット自体はもちろん対象ですが、それに追加して組み合わせるオプション機器(例えばハンド)も対象になるという事です。
  2. 安全構成部品
    • 安全コンポーネントの事で、その機械の安全機能を実行するもの。その部品が故障すると、オペレータなどが危害を受ける物、例えば、安全機能を構成する為の論理ユニット(安全コントローラ)人の存在を検出する保護装置(ライトカーテン)などを含みます。

つまり、産業ロボットを例にとると、ロボット本体、ロボットコントローラ、ティーチングペンダント、ハンド等の付属のオプションに加え、ロボットに人が近づいた事を検知するライトカーテン等の周辺機器もすべて、機械指令の対象である。という事になります。ロボットに関する記事は下記を参照お願いいたします。

->産業ロボット向けロボットコントローラの構造【最重要の4つの機能】

->もうそこまで未来が来ている!産業用ロボットの市場規模と未来予測

->協働ロボットの市場と各メーカの特徴比較。これからの主役は協働ロボット

低電圧指令

低電圧指令(2006/95/EC)は、電気製品に関して安全を確保しながら、機械指令と同様に、EU内に製品を自由に流通出来る事を目的とした指令です。

電気製品の電気的原因による、感電、電気エネルギーによる火災、電気の熱による火傷などの危険、電離放射線(エックス線、ガンマ線)による危険等が対象。

対象となる機器の電圧範囲は、交流(AV)50~1000V、直(DC)75~150Vで動作するものとなります。

低電圧指令では、電気製品の安全を確保する為、次の3点を挙げています。

  1. 一般条件
    • 電気機器が安全に使用されるように、仕様書に対して必要な情報が示されている事。
    • 製造メーカの名称、製品名、商標などが、電気機器に明確に示されている事。
    • 電気機器及びその部品は、安全に接続、配線できるように作られている事
    • 製造者が意図した用途で使用された場合は、危険に対し適切に保護されるよう設計・製造されている事
  2. 電気機器が原因となる危険からの保護
    • 感電から生じる生涯や他のリスクに対し、人が適切に保護されている事
    • 危険になるような高い温度、アーク、放射線を出さない事
    • 電気機器による非電気的なリスクに対しても、人が保護されている事。例えば製品に鋭利な角が無いなど
    • 意図された用途、予見できる誤使用の範囲において、いかなる場合も絶縁が適切に出来ている事
  3. 外部からの影響によって、電気機器に生じる危険に対する保護
    • 人などが危険にならないように、機械的強度や振動などの要求に適合している事。
    • 人などが危険にさらされないように、腐食など非機械的なリスクからも保護されている事。
    • 予見できる過負荷条件下において、人などを危険にさらさない事

低電圧指令に関係の深い、パワエレの記事もありますので、ご参照頂ければ嬉しいです。

参考:産業ロボットの為のパワーエレクトロニクス入門。分かりやすく解説。

EMC指令

「EMC」とは電磁両立性を意味しています。詳しくは下記を参照お願いいたします。

主な対象製品は、家電製品、情報技術機器、産業用機器などを含むほとんどの電気・電子機器となります。

主な安全必須要求としては、以下の2つの要求があります。

  1. 機器から発生する電磁波が、他の機器の正常な動作を妨害しない事(エミッション)
  2. 機器が意図した動作が出来るように、他の機器から電磁波に対する抵抗性を持つ事(イミュニティ)

イミュニティは電磁波以外にも静電気による妨害や、電源、信号ラインから入っているノイズやサージなどによる妨害対策も対象となっています。よって、ほとんどの電気及び電子機器はEMC指令の適用範囲に入る可能性があります。

まとめ

ニューアプローチ指令は約20種あり、設計している機器によって対象の指定は異なりますが、今回は最もメジャーな「機械指令」「低電圧指令」「EMC指令」について記載しました。まとめると、

  1. EUでは、機械設備や使用材料などを安全にし、労働者、その機器の使用者を、障害、健康被害から守る事を目的とし、規格を作り運用している。
  2. 「ニューアプローチ指令」と言われる約20種の指令が発行されており、対象の製品をEU内で流通させるためには、該当する指令へ適合している事を製造者が宣言し、その証に「CEマーク」を製品に張る必要がある。
  3. CEマークの無い製品はEU内では流通出来ない。
  4. 「ニューアプローチ指令」の中でメジャーな指令として、「機械指令」「低電圧指令」「EMC指令」がある。
  5. 機械指令は産業用ロボット、工作、建設、木工機器など可動部を持つ機械類を対象とする。
  6. 低電圧指令は交流50-1000V、直流DC75-1500Vの範囲で動作する、電気/電子機器を対象とする
  7. EMC指令は電磁波妨害を与える機器、または妨害によって影響を受ける電気/電子機器を対象とする。

繰り返しとなりますが、これらの指令に準拠する事は、規格適合が目的ではなく、機械設備や使用材料などを安全にし、労働者、その機器の使用者を、障害、健康被害から守る事が目的となります。エンジニア視点から見ると、規格への適合は非常に大変なタスクとなりますが、その製品を受け取った人、使う人が安全に、安心して使えるような製品を、私は作っていきたいと思っています。

その他、信頼性に関する記事は下記参照頂けると嬉しいです。

参考:信頼性試験まとめ。JIS,ISO,IECの信頼性試験、重要22項目を解説

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