100年に1度の大変革の中で、自動車業界が大きく変わりつつあります。その中で台頭している自動車部品メーカにフォーカスし、本記事では、BOSCH,Continental,MAGNA,Valeo等の外資系自動車部品メーカのマネジメント層の年収と働き方について解説していきたいと思います。
完成車メーカと部品メーカの違いについて
まず初めに、自動車業界に関して説明します。自動車業界は完成車メーカを頂点に、1次下請け、2次下請けと部品メーカが存在し、1次下請けの事を「Tier1」2次下請けの事を「Tier2」というような呼び方をしています。
自動車は部品の集まりであり、自動車メーカ(トヨタ、ホンダ、日産のような会社)は、自動車を作る為に、Tier1(日本だと、デンソー、アイシン等)等から部品を調達し組み立てる事が仕事です。
一方Tier1の仕事は、自動車に組み込む為の部品を作り完成車メーカへ供給する事が仕事です。近年の自動運転技術の進歩に伴い、自動運転に必要な技術開発は主にTier1を主導で進めている場合がほとんどです。
また、Tier2は、Tier1に対して部品やソフトを供給する事が仕事であり、例えば、自動運転に使うソフトはTier2の物を使っているという事も、最近では珍しい事ではありません。
つまり、自動車メーカと自動車部品メーカの仕事は次のような大別されます。
■自動車メーカ:自動車部品メーカ(Tier1)から部品を仕入れ、車を組み立てる事が仕事
■自動車部品メーカ:完成車メーカへ部品やシステムを供給する事が仕事
ここまで説明すると、Tier1と言われるメーカの重要性が見えてくると思いますが、昨今の電動化、自動運転化に伴い、完成車メーカと自動車部品メーカの力関係が逆転してきている、という現象が起きてきています。部品メーカがつくるシステムが無いと、車が売れない。また、部品メーカは良い物を作れば世界各国の自動車メーカへ販売可能であり、特定の自動車メーカに依存した商売をする必要が無い。というのが昨今の現状です。
日本においては、トヨタ自動車の力が強いという事もあり、トヨタとデンソー、アイシンの力関係が逆転する事はほとんどないという状況ですが、
欧州においては、逆転現象が起こりつつあります。売上から見ても、世界一位の自動車部品メーカであるボッシュの売上は10兆円を超えており、小さな自動車メーカの売上を超えているという状況です。
そういった外資の自動車部品メーカが日本にR&Dセンター(研究所)を作り、日本の完成車メーカへ部品を供給するという事が進んできており、その関係で、外資系自動車部品メーカの日本法人が多く設立されています。
これらの会社の年収や働き方について、次の項目で説明していきたいと思います。
日本のTier1の働き方は下記の記事を参照頂ければ幸いです。↓
ものづくりエンジニアの仕事内容と製品が出来るまでのプロセスを公開します
外資系自動車部品メーカについて
それでは外資系の自動車部品メーカを紹介します。2020年の自動車部品売上トップ5は下記です。
日本企業はデンソーとアイシンがランクイン、ドイツのBOSCHとZF、カナダのMAGNAも定番の顔ぶれです。また、ランク外になっていますが、ドイツのContinental、フランスのValeoも有名です。Continentalは少し前まではBOSCHに続き、2位をキープしていました。
それでは本題のこれらの外資系メーカの年収と働き方を見ていきましょう。
■外資系自動車部品メーカの年収
国内外含め、自動車部品メーカのマネージャ層はすべて1000万を超える年収を獲得する事が可能です。
エンジニアと年収に関しては下記の記事も参照頂ければ幸いです。
1000万以上の年収を得たいモノづくりエンジニアは英語を勉強せよ!
各Tier1のプロジェクトマネージャの年収の概略は下記となります。プロジェクトマネージャとは、日本で言うと、課長職くらいの職位です。 プロジェクトマネージャについての詳細は下記を参照頂ければ幸いです。
【募集要項実例】プロジェクトマネージャに絶対必要なスキル教えます。
- BOSCH:1000万~1100万
- Continental:1100万~1200万
- ZF:1100万~1200万
- Valeo:1100万~1200万
- MAGNA:1100万~1200万
ちなみに日本のデンソーやアイシンはPMポジションで下記のような感じです。
- デンソー:1100万~1200万
- アイシン:1000万~1100万
BOSCHは何故か世界一位の売上であるのにかかわらず、給与は他の外資系に比べ低い事が特徴です。
■外資系自動車部品メーカの働き方
外資系企業と言っても、会社によって大きく異なります。特にTier1においては、R&Dセンターが日本にある会社と無い会社で大きく働き方や、従業員の数も変わってきますので、R&Dセンターが日本にある企業と無い企業で分類し説明をしていきます。
- R&Dセンタが日本にある外資系自動車部品メーカ
R&Dセンタが日本にある外資系自動車部品メーカは下に記載の3社です。
- BOSCH
- 従業員(日本):6500人 グローバル:395,000人
- Continental
- 従業員(日本):1700人 グローバル:240,000人
- Valeo
- 従業員(日本):5300人 グローバル:114,700人
本国との役割分担は各社ともおおよそ次の通りとなります。
■新規開発業務:本国
■日本の顧客窓口:日本
■日本の顧客からの要求による仕様変更対応:日本
■日本の道路状況に合わせた調整:日本
つまりは本国で製品開発されたものを日本に販売する事が主なミッション、日本の顧客の要求を本国に通知し、新製品の仕様に入れてもらう事。そこで決まった仕様から外れるような日本の顧客独特の仕様変更が発生した場合は日本のR&Dセンタが対応、自動運転のような機能の場合は、各道路状況によってカスタマイズが必要である為、それも日本で対応といった感じです。
- R&Dセンタが日本にない外資系自動車部品メーカ
次は、R&Dセンターが日本に無い企業です。こちらは開発機能が日本に無い為、基本的にはすべて本国の方で製品開発を実施しています。日本の役割は、顧客の要求をしっかり定義する事と、製品が想定通りに動くかどうかを確認する事。つまりV字のプロセスでいうと、一番左上と一番右上がミッションとなります。日本の従業員数は各社差はありますが、おおよそ100名くらいとなっている事が多いです。
- ZF
- MAGNA
- Vistion
- Veoneer
- などなど
本国との役割分担は各社ともおおよそ次の通りとなります。
■新規開発業務:本国
■日本の顧客窓口:日本
■日本の顧客からの要求による仕様変更対応:本国
■日本の道路状況に合わせた調整:日本
まとめ
外資系自動車部品メーカー、マネジメント層の年収と働き方についてまとめてみました。年収で言うと、十分高いとは思いますが、日本のTier1の年収も同等レベルである事が分かります。またエンジニア業務が海外にあるという事で、技術をしっかり身に着けたいという方は、日本のTier1の方が向いており、技術よりもインターナショナルな環境でプロジェクトをマネジメントしたい、という方には外資系Tier1が向いているのかなと思います。
今回この記事の為にいろいろと調査をしましたが、外資系のTier1企業は、IT系の企業と比べると、思ったより年収が低く、また、よく皆さんが参考にする、就職偏差値のランキングへは各社登場していない(ボッシュはあった気がします)という状況で、まだまだ認知はされていないメーカが多いのかなと思いました。
自動車業界はまだまだ再編が繰り返されると思いますので、そういった激動の中、インターナショナルな環境で働きたい。という方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
転職に関しては下記の記事に方法を載せておりますので、ご参照頂ければ幸いです。
ビズリーチの活用とリクルートエージェントとの比較。年収を上げる方法と、オファーの実例紹介
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