iPhone13Proの技術仕様をわかりやすく解説。レンズ仕様編

iPhoneの技術仕様を分かりやすく解説。その1:レンズ仕様編

iPhoneがリリースされると、ホームページにその技術仕様が公開されます。しかしながらその仕様を深く理解する事は難しいのではないでしょうか?その結果、バージョンが上がった時に何が変わったのか分からないという事も少なくないと思います。本記事では、iPhoneだけでなく、その他のスマートフォンにも共通して使える、スマホの仕様が読めるようになる為の解説を、技術的に、かつ出来るだけ分かりやすくしていきたいと思います。今回はカメラのレンズ編です。

スポンサーリンク

iPhone13Pro仕様一覧

まず今回の記事のターゲットとなる、カメラ部の仕様は次の通りとなります。(今回は代表してiPhone13Proの仕様を例としていますが。他のスマホもご要望があれば解説していきたいと思います。)その中で、本記事では赤枠で囲った部分について解説したいと思います。

スポンサーリンク

レンズ構成

まずレンズの構成です。iPhone13Proの仕様書には次のような記載があります。

  • 6枚構成のレンズ(望遠、超広角)
  • 7枚構成のレンズ(広角)

御存知の通り、iPhone13Proには3種のカメラが搭載されており、広角、超広角、望遠の3種があります。iPhoneの画面下にこのように、「1x」、「3」、「.5」 と記載されていると思いますが、「1x」は広角カメラ仕様、それを基準に「3」は3倍拡大するという意味の望遠カメラ、「.5」は0.5倍、つまり被写体を1/2のサイズし、その分視野を広げるという事で、超広角となります。

つまりこのボタンを押すと、使われるカメラが変わる事になります。

仕様では、

望遠、超広角は6枚構成のレンズ、

広角は7枚構成のレンズ

となっています。カメラのレンズは通常複数枚のレンズが組み合わさって作られており、次のように、何群何枚と記載されている事が多いです。それぞれの意味は下記。

・群:単玉レンズ、または異なる種類の光学ガラスを接合した、接合レンズを1つの群と数える

・枚:単玉レンズ、接合レンズそれぞれを1枚と数える。

例えば下のレンズの例では、4枚目と5枚目が接合レンズとなっており、全部で5群、6枚のレンズ構成という事になります。

iPhone13Proの場合は「群」の記載はありませんので、接合レンズを使っているかどうかは不明ですが、望遠、超広角のカメラは、6枚構成のレンズ。広角のカメラは7枚構成のレンズである事が分かります。

絞り値

次に絞り値について解説していきたいと思います。iPhone13Proの仕様では次のように記載があります。

  • 望遠:f/2.8絞り値
  • 広角:f/1.5絞り値
  • 超広角:f/1.8絞り値

まずこの仕様で何を表現したいかというと、Fナンバーです。Fナンバーとはレンズによりできる像の明るさを示します。

下の図のように、Fナンバーは次の式で求められます。

Fナンバー = 焦点距離f / 有効径a

Fナンバーは小さいほど、1点に結ぶ光の量が増えて明るい画像となります。一般的には、Fナンバーが小さいレンズの事を ”明るいレンズ” や ”ハイスピードレンズ”、”大口径” と表現されます。ハイスピードとは、光量が多い分だけ、シャッタースピードが速く出来る為にそのように呼ばれます。

光量は入射する光束の面積で決まる為、光量は有効径の2乗に比例。よって、Fナンバーは焦点距離が一定なら、有効径に比例するので、Fナンバーが2倍になれば、光量は4倍になります。

ここで仕様にもう一度戻ると、次のような記載となっておりますので、

望遠:f/2.8絞り値
広角:f/1.5絞り値
超広角:f/1.8絞り値

Fナンバーは上記式の通り、

Fナンバー = 焦点距離f / 有効径a

であり、有効径とは絞りの事ですので、

有効径(絞り)=焦点距離f / Fナンバー

と表す事が出来、つまり、下の数値の部分がそのままFナンバーになります。つまり上記の仕様は、

  • 望遠:Fナンバー 2.8
  • 広角:Fナンバー 1.5
  • 超広角:Fナンバー 1.8

という事になり、明るさを比較すると、

広角が一番明るく、望遠の約3.5倍、超広角の約1.4倍の明るさという事になります。明るさを比較する計算式は次の通りです。

広角(1/(1.5)^2) / 望遠(1/(2.8)^2) ≒3.5

広角(1/(1.5)^2) / 超広角(1/(1.8)^2) ≒1.4

焦点距離(f)と視野角

上記の仕様の中で、「f」という物が出てきました。これは先程説明した、Fナンバーの「F」とは異なり、スモールf、「焦点距離」です。この図に戻りますが、焦点距離とは、レンズの中心から像面までの距離です。ここで言うレンズの中心とは、複数枚あるレンズを1つの塊と考えた時の中心点、「主点」と言われる中心から、像面(イメージセンサ面)までの距離のことを焦点距離と言います。

この焦点距離と視野角(画角)との関係について解説します。下のiPhone13Proのカタログですが、焦点距離はそれぞれこのように記載があります。

  • 望遠:77mm
  • 超広角:13mm
  • 広角:26mm

この記載方法ですが、おかしいと思いませんか?iPhone自体の厚みが10mm以下なのに焦点距離がそれよりも大きいというは変ですよね?この理由は、35mm換算をしている為です。

35mm換算とは

35mm換算とは、一眼レフカメラに合わせた考え方です。昔の一眼レフカメラのフィルム仕様は下の図のようになっていました。撮像面が36mmx24mm、縦の最大長が35mmです。この35mmから、一眼レフの焦点距離の見方と合わせる方法として、「35mm換算」という言葉が良く使われます。ちなみにデジタル一眼レフのイメージャサイズもフルサイズの物はこれと同じ、36x24mmのサイズとなっています。

では、なぜ一眼レフの焦点距離に換算する必要があるのでしょうか?

それは、焦点距離からそのまま画角が分かる為です。下の図のように、フィルムサイズ(イメージャサイズ)が同じ場合、焦点距離が変わると、そのまま画角に影響します。つまり、焦点距離と画角は一対一の関係がありました。

フルサイズのイメージャと画角の関係は次の通りとなります。

 レンズの焦点距離(フルサイズ機) 画角(対角線)単位(°)
 5mm 154
 6mm 149
 7mm 144
 8mm 139
 9mm 135
 10mm 130
 12mm 122
 14mm 114
 16mm 107
 18mm 100
 20mm 94
 24mm 84
 28mm 75
 30mm 72
 35mm 63
 40mm 57
 50mm 46
 60mm 40
 70mm 34
 80mm 30
 90mm 27
 100mm 24
 120mm 20
 140mm 18
 160mm 15
 180mm 14
 200mm 12
 250mm 10
 300mm 8
 400mm 6
 500mm 5
 600mm 4
 800mm 3

しかしながら、デジタルのイメージャが出始め、特にモバイル用のイメージャが出てくると、イメージャのサイズがメーカ等により異なる為、焦点距離と画角の関係が分からなくなってしまいました。下のようなイメージです。

昔からカメラを扱っている方には非常に分かりにくく、イメージャサイズが変わっても、35mm換算する事で、画角が分かるように、カメラの仕様では、焦点距離を35mm換算で記載する場合が多くあります。

話を戻すと、先程のiPhone13Proの仕様ですが、それぞれ35mm換算された焦点距離から、画角を見積もる事が可能です。

  • 望遠:77mm → 31°
  • 超広角:13mm → 118°
  • 広角:26mm → 80°

計算は下記のサイトが便利です。

https://xn--35mm-y27hg92j.com/

まとめ

本記事で紹介した、iPhoneのカメラのレンズ仕様から、iPhone13と13proの仕様を読み解くと下記の表のようになります。見るべきポイントはF値かなと思います。iPhone13とProを比較すると、Proは望遠が付いているだけと思われがちですが、超広角のレンズはF値が2.4(iPhone13)と1.8(iPhone13Pro)という差があり、その差は約1.8倍と、Proの方が2倍近く明るいレンズである事をさしており、これは、夜景撮影や、暗い箇所に強いという事が分かります。

広角の方も微妙にF値が異なる事から、別のレンズが使われております。これは予想ですが、0.1だけF値を変える為にわざわざ新規のレンズを作っているとは考えにくい為、このカタログにはない別の仕様で、広角の方もProの方が優れた何かがあるような気がしています。

iPhone13iPhone13 Pro
広角超広角広角超広角望遠
レンズ構成(枚)75766
F値1.62.41.51.82.8
焦点距(mm)2613261377
画角(°)801188011831

動画でも解説しておりますので、よろしかったらご覧ください。

iPhoneに関する他の記事は下記にもあります。

参考:iPhone15 Pro MaxとiPhon14 Pro Max の仕様を比較してみた

参考:どこがすごい?iPhone14のカメラ。技術仕様を簡単に解説します。

参考:iPhoneの技術仕様を分かりやすく解説。その1:レンズ仕様編

参考:iPhone13Proの技術仕様を分かりやすく解説。レンズアクチュエータ編

参考:iPhone13Proの技術仕様をわかりやすく解説。光学ズーム、デジタルズーム編

参考:iPhone13Proの技術仕様をわかりやすく解説。LiDARスキャナ編

レンズに関する記事は下記も参照頂ければ幸いです。

参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識

参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、レンズ構成、レンズのスペックを分かりやすく解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、解像力、MTF、空間周波数、TV解像度を解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、収差、スネルの法則をわかりやすく解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、撮像素子(イメージセンサ)における制約を解説

参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズコーティングの関係を解説

記事が気に入って頂けたら、クリックして頂けると嬉しいです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました