カメラモジュールに使われる、光学関係、レンズの基礎用語をまとめました。設計者に有用な用語を主に取り上げて簡単に説明しております。カメラの設計に関わっている方、これからカメラ関連の業務に関わる方向けに、用語集として活用して頂ければ幸いです。また、設計者だけでなく、カメラを扱うユーザの方にも有用になるように基本用語も混ぜ説明していきます。
もしこんな用語も追加してほしいというご希望がございましたら、コメント欄にお願いいたします。
フォーカス
焦点(ピント)を合わせる事。フォーカスを合わせる方法としては、オートフォーカス(AF)とマニュアルフォーカス(MF)の2種がある。
焦点
ピントの事。専門的には無限遠光線を入射させた時の結像点の事を指す。通常、イメージ・センサ側の像位置を後側焦点といい、像側から無限遠光線を入れた際の結像点を前側焦点と呼ぶ。有限距離から光線を発した時に結像する点は、像点あるいは、結像点と呼び、焦点とは区別する。
無限遠
カメラのレンズなど、光学系において、これ以上ピント調節が不要となる距離。
例えば距離が近い所の被写体を写すとき(例えば1m以内)と遠い被写体(例えば遠くの山)のピントを同時に合わせる事はできませんが、ある距離を離れてしまえば(例えば2km先の山と5km先の山)同時にピントを合わせる事が可能です。
離れれば離れるほどピントの合う範囲(被写界深度(後述))が広くなり、ピントがどこでも合うようにあります。その、ピント合わせが不要になる距離を無限遠という。
完全な水平光であればいかなる光学系でも無限遠となるため、メーカーによる製造時や修理時はコリメーターを使って無限遠を再現する。実用上の目安としては、焦点距離の2000倍以上の距離があれば無限遠と見なすことができる。
絞り
レンズから入る光の量を調整(露出を調整)する為のものです。レンズの中にあり、穴の開口径を変える事で、取り込む光の量を調整する。また、絞りを変える事によって被写界深度を変えられます。
F値
レンズの明るさを示す指標。F値が小さくなるほど明るいレンズという事になります。焦点距離をfとし、光束径をDとした時に次の式で表す。
F=f/D
ワーキングディスタンス
レンズの先端から被写体のピントを合わせた位置までの距離。つまりカメラと被写体のピントを合わせた距離
被写界深度
ワーキングディスタンスに対し、その前後のピントが合っている範囲。つまりカメラから被写体までのピントが合う範囲。例えばカメラから2mの所でピントがあるカメラがあったとして、そこに立っている人がもし1.9m~2.1mの範囲で動いてもピントが変らないのであれば、その範囲を被写界深度という。上の図を参照
焦点距離
レンズの中心の「主点」から撮像素子に結像するまでの距離(ワーキングディスタンスの箇所に書いた図の通り)
焦点深度
焦点距離を中心に前後、ピントが合う範囲の事を焦点深度という。(上の図参照)
画角
カメラの光軸の中心を0°と定義し、主に水平方向と垂直方向の撮像範囲を示す角度。下の図の1を水平画角といい、2を垂直画角という。
MTF
レンズの解像度を示す、周波数特性。1mm辺り何本の白黒の繰り返しパターンが解像できるかを定量的に示したもの。一般的にはMTFを示す単位は「lp/mm」が使われ、lpとはラインペア(line pair)を示す。つまり、1mmの中に白黒ラインのペアが何ペア見えるかを示す単位。
光学ディストーション
レンズそのものが持つ歪みの特性を光学ディストーションという。TVディストーションと分けられている。光学ディストーションの大きさは、本来結ぶべき距離(下記PD)と、実際に像を結んだ距離(下図AD)の関係から算出する事が出来る。
注意点として、この歪みがそのまま画像として出てくる物ではなく、この光学系のどのエリアにイメージセンサを配置するかで、画像に現れる歪み量がかわる。
結果的にカメラの世界では、後述するTVディストーションが歪みを表す指標としては一般的となっている。
TVディストーション
TVディストーションの測定は、米国RIAAの画像標準規格によって規定されており、正方形状のテストターゲットを用いて実視野の垂直方向の画面いっぱ いにまで映るようレンズで撮像し、撮像した正方形状チャートのコーナー部と端面中央部間の高さの違いから、下の式に沿ってを求めることができる。TVディストーションは、画像端面部に映る一本線がどの程度真っ直ぐに映るかを定量化したものであり、カメラの画像に出てくる歪みを定量的に測定する事が可能。
収差
収差とは理想的な結像からのズレの事。理想的にはすべての光は同じ焦点距離の箇所で結像する事が理想であるが、実際は波長特性やレンズの特性によりそうはならず、光線ごとに焦点の距離がずれてします。それを収差という。
収差に関しては次の記事でも取り上げています。
->まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識
シェーディング
光学系やCMOSセンサの性能による、出力画像に見られる、画像中心と周辺の明るさの差をシェーディングという。光学系に関しては周辺に行けば行くほど、光の入射角が大きくなり光量が落ちる為、画面中心に対し光量比が発生するのと、CMOSセンサに関しては、OCL(オンチップレンズ)に対する光の入射角が大きくなるため、画像周辺の取り込める光の量が少なくなり、周辺が暗くなる。シェーディングのイメージは下記
下記の記事でも説明していますので、もしよろしければご覧ください。
->カメラの性能を決める、ISP(イメージシグナルプロセッサ)の機能と信号処理
イメージサークル
レンズを通った光が結像する円形の範囲のこと。光学ディストーションの多いレンズや、広角カメラの場合はこのイメージサークルとイメージャの撮像範囲を調整する事で、レンズの特性の良い部分だけを絵として出力するといった対策をとる場合もあります。
フランジバック
レンズ交換式のカメラにおいて、レンズマウントのマウント面から、撮像素子(イメージセンサ)までの距離の事を示す。
一方、焦点距離は、レンズの「主点」からイメージャまでの距離を示しており、フランジバックは、交換レンズの取り付け面からイメージャまでの距離である為、両者は異なります。
バックフォーカス
レンズの最高端から、焦点(イメージャ)までの距離を示す。フランジバック、焦点距離と混同しがちですが、イメージは下の図になります。
Cマウント
Cマウントとはねじを利用してカメラとレンズを固定するスクリューマウントの方式で、本規格に準拠した物であれば、相互に交換が可能となり、監視カメラや産業用カメラ、または、各種評価用カメラを扱う際、イメージャはそのままでレンズのみ交換したい。という要望の為に作られた規格です。
規格は、内径25.4mm(1インチ)、ネジピッチ0.794mm、フランジバック17.526mm
カメラの小型に伴い、Cマウント規格のフランジバックだけを5mm短くしたCSマウントというものもあります。
シャッタ速度
露光時間の事をシャッタ速度と言います。絞りと同様、露出時間を調整する事で、イメージセンサに取り込む光の量を調整が可能であり、次の特徴があります。
・シャッタ速度を速める事により、被写体の動きが止まったように撮影可能
・シャッタ速度を速める事により、手ぶれを抑制可能
・シャッタ速度を遅め、長時間露光する事により、暗い場所でも多くの光を取り込め綺麗に撮像が可能
・シャッタ速度を遅め、長時間露光する事により、動いていない被写体のみ抽出する事が可能(露光時間が長いので、動いている被写体はすべてぶれる)
NDフィルタ
可視光領域(約400um~700nm)の分光透過率を均等に減少させる働きをするフィルタ。一眼レフカメラでは、被写体が明るすぎて、レンズの絞りだけでは、光量調整が不可能な場合、絞りを固定で使用したい場合の光量調整を行う時に使用します。
色温度変換フィルタ
光源の色合いは色温度で表され、色温度が低ければ赤身を帯び、高ければ青みを帯びます。色温度を意図的に下げる為にはアンバ系のフィルタ、上昇の為にはブルー系のフィルタを使います。そういった色温度の調整をする為のフィルタです。
偏向フィルタ
水面やガラスなどの表面から反射する光を減少させるフィルタ。例えば、ガラスの奥に被写体があり、ガラス面の反射が強く、被写体が確認しづらい場合に使用される。
使用法としては、レンズの前に固定し、フィルタを回転させ、反射光が除去される位置で固定して使用する。
単焦点レンズ
焦点距離が固定されたレンズ。
焦点距離の数字が小さいと、広い画角をレンズに収める事ができ、数字が大きいと、画角が狭く近い距離を撮影する時に利点があります。
単焦点レンズは上記焦点距離が固定されたものである為、画角が固定されている事が特徴であり、良い面としては、F値が高く明るいという所と値段が安いところ。
ズーム・レンズ
焦点距離を変えられるレンズ。
つまり、画角を自由に変える事ができるレンズ。
1本のレンズでいろいろな写真を撮る事が可能となりますが、レンズの枚数が増えてしまう為、高価になり、F値も単焦点レンズに対し暗くなります。
標準レンズ(単焦点)
センサの対角長と焦点距離がおよそ等しいレンズを一般的に標準レンズと言われています。例えば、35mm版サイズのイメージャは横36mmx縦24mmで対角約43mmであり、焦点距離が43mmのものを標準レンズと呼ぶ。
望遠レンズ(単焦点)
35mm版イメージャでいうと、焦点距離が70mmくらいのものを中望遠レンズ、135mm近辺以上のものを望遠レンズと呼ぶ。
広角レンズ(単焦点)
35mm版イメージャでいうと、35mm以下の焦点距離をもつレンズを一般的に広角レンズと呼ぶ
マクロレンズ(単焦点)
被写体を大きく写すことのできるレンズ。マクロレンズは最短撮影距離が他のレンズよりもずっと短いので, 被写体に近づいて撮影することができる。
魚眼レンズ(単焦点)
中心射影方式でない射影方式を採用しているものを指す。
魚眼レンズは、超広角レンズ以上に広い範囲を写すのに用いられる。 通常の写真レンズは被写体を極力歪まさずに描写することを目指しているが、魚眼レンズに関しては歪ませて広い範囲を描写する。そのため被写体にある直線のほとんどは曲線として描かれる
光学系の用語に関して概要を説明してきましたが、より詳しく学びたい。という方は下記のような書籍もありますので、ご参考にしてください。
記事が気に入って頂けたら、クリックして頂けると嬉しいです。
コメント