【ISP技術入門】カメラのISO感度、とシャッタースピードを解説

【ISP技術入門】カメラのISO感度、とシャッタースピードを解説

カメラの明るさをコントロールする2つの技術として、ISO感度とシャッタスピードという物があります。ISO感度やシャッタースピードを変えると、一体カメラには何が起きるのか?その原理が分かると、写真撮影時にも役に立つのではと思い、これらの2つの明るさをコントロールする技術を、エンジニア観点で解説していきたいと思います。

スポンサーリンク

ISO感度とは

デジタルカメラの場合、ISO感度とはレンズから入ってきた光を、カメラ内でどのくらい増幅させるかの指標になります。要するにアンプです。

カメラ内に入ってくる光の量は、絞りとシャッター速度で決定され、その光の量から適切な明るさの画像になるように光を増幅させます。その増幅具合を数字で表しているのがISO感度です。例えば、ISO200とはISO100の2倍感度が高いことを示し、ISO100の時に比べて光の量が半分の場所でも同じ明るさで写真を撮ることができます。言い換えると、アンプ量が2倍という事です。

ただし、ISO感度を上げていくとアンプによって電気的な増幅をしているため、上げれば上げるほどノイズが増えてきます。撮影感度が低いほうがアンプによる増幅が少ないため、発生するノイズも少なくなります。結果的に、低感度の方が高画質で撮影できるようになります。

ノイズが増幅される仕組みを図で説明すると、次のようなイメージです。まずレンズから入ってきた光は、イメージセンサに当たり、各画素のフォトダイオードに当たります。下の図はイメージセンサの断面を表しており、照射された光がイメージセンサ上のオンチップレンズと、RGBカラーフィルタを抜け、フォトダイオードに当たっているイメージです。

フォトダイオードに当たった光は電荷に変換され、その後下図の電荷検出部で電気に変換されますが、ここでアンプされます。つまり信号が増幅されます。ISO感度を変更させるという事は、多くはここのアンプの増減を変化させる事を意味します。(デジタルアンプの場合もありますので、その場合は異なりますが、説明が複雑になる為、割愛します。)


では、このアンプで増幅すると何故ノイズが増えるのでしょうか?それを下の図で解説します。理想的にはアンプで信号を増幅した場合、その信号だけが増幅してほしい所ですが、実際は、含まれているノイズまで同時に増幅されてしまう為です。通常、沢山の光が照射されている時は、電荷の量に対し、ノイズ量は非常に少なく目立たないのですが、光が少ない環境であればあるほど、電荷とノイズの割合が同じになってしまったり、逆転してきます。それをアンプすると、電荷と同時にノイズも増幅され、結果それが写真に見えてしまうという現象が発生します。

よって、低照度の環境(暗い環境)では、ISO感度を下げ、シャッタースピードを長くすることで、ノイズの少ない写真を撮る事が出来るようになります。

※黄色:電荷 黒:ノイズ
スポンサーリンク

シャッタースピードとは

次にシャッタースピードに関して解説します。

シャッタースピードとは、イメージセンサの露光時間を調整する事を指します。例えば夜景を撮影したい時、夜景モードを用いると、スマホでも綺麗に夜景が取れますが、撮影中にスマホを動かしてしまい(手振れしてしまい)、画像がぶれて取れてしまった、という経験が皆お持ちだと思います。これは何故発生するかというと、露光時間が長いからです。つまり光を集める時間を長くすればするほど、微小な光でもそれが蓄積され、多くの光を取り込む事が可能となりますが、その分露光中の動きがすべて「振れ」として画像に現れてしまいます。

その手振れを抑える為に、ISO感度を上げ、シャッタースピードを延ばさなくても撮影できるようにすればよいのですが、ISO感度を上げすぎると、上で説明した通り、ノイズが出てきます。この「手振れ」と「ノイズ」はデジタルカメラにとっては永遠の課題となっております。

それでは、シャッタースピードに関して解説していきたいと思います。

シャッターには電子シャッタとメカシャッタの方式がありますが、名前の通り、いずれも、光をイメージセンサのフォトダイオードに蓄える時間を決める為方式を指しており、電気的にコントロールする方式を電子シャッタ、メカニカル的にコントロールする方式をメカシャッタと言います。

■電子シャッタ

電子シャッタとは、メカニカルな機構無で、露光時間をコントロールするシャッター方式です。スマホカメラはこの方式を使っている物が多く、露光のスタートと終わりを電気的に決めています。

また、現在のスマホカメラはローリングシャッタ方式が多いです。ローリングシャッタとは、下の図のイメージのように、各ラインごとに露光を開始するタイミングが異なり、1ライン目から最終ラインに向け、順番に露光していく方式です。

この方式を用いると、各ラインの露光時間が異なる事から、高速に動く被写体を撮影した場合、この列車の写真のように歪んで見えてしまうという欠点があります。ローリングシャッタに関しては下記の記事にも詳しく記載していますので、ご参照お願いいたします。

参考:CCD,CMOSイメージセンサとは?種類と原理を分かりやすく解説します。

シャッタスピードを早くすればするほど、各ラインに発生する時間差が少なくなる為下記のような歪は発生しにくくなります。

■メカシャッター

次にメカシャッターに関して解説していきます。メカシャッタとは、デジカメで写真を撮る時にレンズの前のシャッタが閉まると思いますが、それの事です。

メカシャッタの役割は、まさに光を瞬時に遮断する事です。ローリングシャッタのイメージセンサには、全画素が同時に露光を開始する機能があります。しかしながら、イメージセンサは下の図のような回路になっている為、蓄積された電荷を電気信号として伝送する場合、すべてのスイッチを同時にON/OFFする事はできません。理由は同時にON/OFFすると吐き出されるそれぞれの画素のデータが混ざってしまう為です。映像を各画素ごとにしっかり作る為に、蓄えられた電荷は順番に掃き出しを行わないといけません。(各画素の情報を蓄えるメモリの無いイメージャに限る)

その方式のイメージセンサの露光と掃き出しのタイミングは下の図のようになります。露光は全画素同時、掃き出しはライン毎。そうすると、この図を見て分かる通り、各ラインの蓄積される光の量がかわってしまう事になります。

そこで活用されるものが、「メカシャッタ」です。下の図のように、全画素同時に露光が開始され、あるタイミングで、シャッタが閉まります(下の図では赤色のライン)そうすると、しまった後は遮光状態であるので、露光されません。イメージャの動きは上の図と同じでも、光は、露光開始から、メカシャッタを閉じるまでしか入らない為、全画素が同時に露光を終えた事と同じ事になります。つまり、全画素が同時に露光を開始し、全画素が同時に露光完了する。という事が可能となります。そうする事で、先程の列車の写真のように、被写体が歪む、という事を避ける事が出来ます。

本記事では、ISO感度とシャッタースピードについて解説しました。実際写真を撮る時、これらの設定を自分なりに変更する事で、思ってもみないような綺麗な写真が撮れるかもしれません。いろいろ試してみると面白いと思います。露光時間を意図的に伸ばした例として、下の写真のように、車のヘッドライトが線を描くような写真を撮る事も可能です。

記事が気に入って頂けたら、クリックして頂けると嬉しいです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました