スマホに搭載されている生体認証の種類に指紋認証、顔認証があります。誰もが経験があると思いますが、手洗いの後濡れた指で指紋認証が失敗したり、マスクをしている時に顔認証が失敗したりした経験があるかと思います。もっと便利でセキュリティが高い生体認証ないの?と思われている方、
そんな疑問にお答えします。
本記事では、現在世の中に出ている生体認証の種類の説明をし、その中で最もセキュリティが高いと言われる静脈認証の性能、最後にその仕組みに関し説明します。
生体認証の4つの種類
世の中には数々の種類の生体認証がありますが、ここでは身近な4種の「生体認証」について簡単に解説していきたいと思います。
- 指紋認証
- 人の「指紋」を用いて認証を行う技術です。スマホに多く採用されメジャーになりました。指紋の模様をスキャン、記録し、認証を行います。
- 技術的には指をセンサー上に置いた時の電荷の変化を見ます。指紋の凹凸の場所によって電荷の量が異なりますので、その電荷量の違いから、指紋の凹凸を把握し、記録する仕組みです。水が指についていたりするとその電荷量が変りますので、結果認証出来ない。という事態が発生します。
- 顔認証
- 人の「顔」を用いて認証を行う技術です。こちらもスマホで多く採用され、メジャーになっています。
- 技術的には、カメラで顔を撮像し、その顔の特徴点(目、鼻、口、輪郭等の特徴)を把握し認証を行います。よって、マスクをしていたりすると、目以外の鼻、口、輪郭の特徴点が変ってしまいますので、認証に失敗してしまう。という事になります。
- 虹彩認証
- 人の目の「虹彩」を用いて認証を行う技術です。虹彩とは、黒目の中の瞳孔を除いた部分の事を指します。空港等の個人認証で用いられようとしています。
- 技術的には、カメラを用いて、虹彩を撮像し、虹彩にあるパターンを認識する事で認証します。このパターンは人によって異なり、高精度である事と、顔全体のデータが記録されるわけではない為、顔認証より抵抗が少ないといったメリットから、今後の発展に期待されています。
- 静脈認証
- 人の手のひらや指の「静脈」を用いて認証を行う技術です。銀行等ですでに活用されている場面があり、セキュリティは非常に高く、静脈は人に目では見えない為、偽装されずらく、経年変化も少ない事から、最もセキュリティの高い生体認証だと言われています。
- 技術的には、静脈をカメラで撮像するのですが、赤外の光で静脈を撮像し、そのパターンを認識する事で認証します。(詳細は後述します)
静脈認証の認識性能と7つの特徴
指静脈認証とは、人の手のひらや指の「静脈」を用いて認証を行う技術です。静脈パターンを赤外カメラで撮像する為、皮膚表面の状態(肌荒れ、怪我、しわ等)に関係なく、静脈パターンを取得可能であり、最もセキュリティが高い生体認証だと言われています。
また、肌の状態だけでなく、水がついていたり、汚れが付いていても赤外の光が透過出来る物であれば問題ありません。手袋をつけていていたりした場合は難しいですが、日常生活でつくような、水や、洗剤、油、日焼け止めクリーム等も程度にもよりますが、問題なく認証は可能となります。
生体認証事のFARとFRRは次の通りです。
※FAR(他人受入率):他人を本人と間違えて受け入れてしまう確率。低い方が望ましい。
※FRR(本人拒否率):本人を本人ではないと間違えてしまう確率。低い方が望ましい。
生体認証種別 | FRR(本人拒否率) | FAR(他人受け入れ率) |
指紋認証 | ~0.1% | ~0.1% |
顔認証 | 0.1%~ | 0.01%~ |
虹彩認証 | 0.1% | 120万分の1 |
静脈認証 | 0.01% | 100万分の1 |
この表を見ると、指紋、顔認証に対し、虹彩、静脈認証の性能が明らかに高い事が分かると思います。その中でも静脈認証は本人拒否率も非常に高く、本人が拒否をされる事もなく、他人が誤って認証される事もない、最強の生体認証だという事が分かります。
特徴としては下記の項目が挙げられます。
- 肌の内部の静脈を使用する為、偽装、なりすましが困難。(指紋認証では海外では指を切られ悪用されるという事件もありますが、静脈の場合は指を切られた時点で血流が止まる為、そういった被害もなくなると思われる)
- 静脈パターンは双子でも異なる為、誤って認証される事は基本的には無い
- 指紋のように、触れたものに痕跡が残らなく、その指の中にしか模様が無い為、パターンを盗み見られる事が無い
- 基本的には経年変化する事が無い。
- 肌荒れ、怪我、ひび割れ等があっても利用可能
- 水や油、洗剤等がついても基本的には利用可能(素材による)
- 手や指をかざすだけで、非接触な構成が可能な為、使用に抵抗感がない
静脈認証の仕様とカメラモジュールの仕様
静脈認証は人の手のひらや指の「静脈」をカメラで撮像して認証を行う技術ですが、もう少し深堀したいと思います。
静脈内を流れる血液中の還元ヘモグロビンは近赤外の光を吸収する特徴があります。よって、近赤外の赤外線を手のひらや指にあてて、光を吸収して黒く映し出された静脈パターンを抽出します。この静脈パターンとあらかじめ登録されている静脈パターンとマッチングする事で認証を実施します。
下記「1」~「3」の部分はカメラモジュール。「4」が近赤外光源、「5」が指もしくは手のひらとなり、指や手のひらを赤外照明で撮像し、その光を吸収した静脈パターンをカメラで撮像します。
この構造は実は、車載のドライバーモニタリングカメラと全く同じ仕組みとなります。
->ドライバーモニタリング用カメラの仕様【自動運転時代には必須】
- レンズ鏡筒
- レンズに関しては「まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識」の記事で基本的な内容を説明させて頂きました。その内容と概ね同じですが、1点だけ違いがあり、それは赤外線専用レンズである事です。赤外線専用とは何か?ですが、レンズには様々な収差があると、レンズの基礎知識の記事で説明をさせていただきました。その収差は光の波長が広ければ広いほど抑える事が難しくなる為、通常のレンズは可視光で収差が出ない様にレンズが設計されています。つまり赤外線では収差がある。という事です。そのままこの通常のレンズを使ってしまうと、ピントが合っていないような、ボケた画像になってしまいます。そこで、赤外線の波長に特化した、専用レンズで、赤外の帯域で収差が発生しない。という専用レンズを用います。
- BPFフィルタ
- 聞きなれない言葉だと思いますが、簡単に説明していきたいと思います。BPFとは、特定波長の光を透過させ、それ以外をカットするフィルタの事です。静脈認証モジュールは赤外の光しか扱わない為、赤外線以外光をカットする(透過させず、イメージセンサには取り込まないようにする)為に、本フィルタを用います。
- イメージセンサ―
- これも赤外線用イメージャを用います。イメージセンサ―は通常カラーフィルタという物が付いており、R,G,Bの色を再現し、その3原色から様々な色を作ります。しかしながら赤外線専用カメラの場合はカラーは必要ありませんので、モノクロのイメージャを使う事になります。監視カメラの映像が白黒であるのも同じ原理です。イメージセンサに関する記事は下記の記事を参照お願いします。
- モノづくりエンジニアの為の、CMOSイメージセンサの基本原理
- 近赤外光源
- 赤外照明です。上記記載のように、血液中の還元ヘモグロビンは近赤外を吸収する。という特徴を持っておりますので、手のひらもしくは指に対し、カメラと反対方向から光を透過。もしくはカメラと同じ方向から照射させる事で、静脈をカメラに撮像します。
- 指や手のひら
- カメラと赤外光の間に入れる。もしくは、カメラと同じ方向においてある赤外光の光を当てるようにかざします。商品によって、非接触(指や手のひらをかざすのみ)であったり、接触タイプ(指や手のひらをどこかに乗せる)であったりします。
これまで静脈認証の良いところばかりを上げてきましたが、弱点もあります。少し弱点に関しても言及します。
光を手に当ててその光を吸収した静脈をカメラがみるという特性上、太陽の光といった、赤外光を多く含む外光が強く入ってしまう場合に動作が困難になる場合があり、外光が当たらないような構造を作らないといけなかったり、工夫が必要となります。それらの課題を解決できれば、セキュリティとしては、生体認証の中で最も強固な物になると思います。
✓まとめ
現在注目されている生体認証には次の4種があります。この中で最もセキュリティが高い生体認証は静脈認証であり、その構造はカメラと赤外光を用い、赤外光が血液中の還元ヘモグロビンは近赤外を吸収するという特徴を利用し、カメラを用いて指の静脈を撮像する。という仕組みとなります。
- 指紋認証
- 顔認証
- 虹彩認証
- 静脈認証
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