カメラのレンズ基礎知識入門という事で、レンズに関する基礎を記載していきたいと思います。今回は、撮像素子(イメージセンサ)により発生する制約として、オンチップレンズ、周辺光量、について説明していきます。カメラ好き、レンズ好き、エンジニアの方向けに分かりやすく記載していきたいと思います。
オンチップレンズとレンズの関係
オンチップレンズとは、イメージセンサの各画素の上の取り付けられているレンズです。
イメージセンサには画素と同じ数だけフォトダイオードが付いていて、そのフォトダイオードで光を電気に変換し、その電気の量をデジタルのデータとして扱い、そのデータの量で明暗を表現する事で、映像を作っています。(※中には1画素に2つフォトダイオードが付いているイメージャもある)
よって、光がどれだけしっかり取り込めるか、という所が、デジカメの機能の鍵となります。下の例はオンチップレンズ(以降OCL)のイメージで、イメージセンサの断面を表しています。各画素の上にはOCLが取り付けられており、下図真ん中の垂直入射の際には、OCLですべての光が集光され、フォトダイオードに光が効率よく当たっている事が分かるかと思いますが、左のイメージのように、光が斜めから入った場合、すべての光が集光できず、有効な光束は垂直入射時よりも減ってしまい、結果的に画面の明るさ、周辺光量の悪化に影響を及ぼします。
それでは、この特性を考えた時に、光学レンズ設計はどのような事に注意すればよいか説明していきたいと思います。
■Fナンバー
Fナンバーが明るくなればなるほど、OCLには斜め入射になる事によって、その光線はフォトダイオードから外れる事になる。つまりFナンバーが明るいレンズほど、OCLの恩恵を受けにくくなってしまい、中心と周辺との明暗差が大きくなってしまいます。周辺光量とFナンバーのバランスをとった設計をする事が重要です。
■射出瞳
射出瞳が近いと、光線が撮像素子に斜めに入射する為、晴天屋外などでシェーディングが顕著に表れる。撮像素子の開発段階において、許容できる射出瞳の範囲をシミュレーションや実験により求め、射出瞳を決める事が重要です。
つまり、OCLの特性をしっかり考慮した光学設計をする為には、光の入射角を考慮し、画像のセンターと周辺の光量比を考慮した設計をしないと、Fナンバーの数字だけよくても周辺がやたらと暗いといったカメラが出来てしまいますので、画像中心と周辺の光量バランスをとった設計が必要です。イメージセンサの仕様書には、OCLに対しどのくらいの角度の光を当てれば良いかという事も記載してありますので、その情報を元にレンズ設計をする必要があります。
ここで射出瞳に関して少し説明しておきたいと思います。下の図のように、
黄色の実線:光軸に平行な平行光
橙色の実線:光軸上に無い被写体からの平行光
として線を引いた時、撮像面から見て、それぞれの光束に対し、屈折部分を延長した線を黄色と橙色の破線とすると、その2つの破線はどこかで交わります。その交わった点を射出瞳位置と言います。
周辺光量
撮像面周辺の光量を計算するには、コサイン4乗則を用いる。
コサイン4乗則:周辺光量=中心光量 x 開口効率 x cos^4Θ
ここでいう、開口効率とは
開口効率:中心光の入射光束断面積(S)と、周辺光の入射光束の断面積(S’)の比、S’/S となります。
下の図で、模式的に説明すると、イメージャ中心に入る、光の束と、周辺に入る光に束の断面積は、レンズやOCLを通す事で必然的に小さくなりますので、そもそもフォトダイオードに入る光の量は減少します。それに加え、コサインの4乗則が効いてきますので、光に角度がつけばつくほど、周辺は暗くなってしまうのが分かると思います。仮に45°だとしても、コサイン4乗則だけで光量は1/4になってしまう計算です。
このように、光は斜めに入射されると非常に弱くなってしまいます。かつ、OCLの影響もうけますので、レンズ設計時には、入射角とOCLの特性を考慮する必要があります。
レンズに関しては下記の記事も記載しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識
参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、レンズ構成、レンズのスペックを分かりやすく解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、解像力、MTF、空間周波数、TV解像度を解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、収差、スネルの法則をわかりやすく解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズコーティングの関係を解説
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