カメラのレンズ基礎知識入門という事で、レンズに関する基礎を記載していきたいと思います。今回は、レンズの解像力、MTF、空間周波数、TV解像度を題材に説明していきます。カメラ好き、レンズ好き、エンジニアの方向けに分かりやすく記載していきたいと思います。
解像力
解像力には、「撮影解像力」「投影解像力」の2つがあります。
撮影解像力
撮影解像力は様々なピッチの白黒矩形パターンから構成される解像度チャートを撮影して、そのピッチのチャートまで縞が分離して見えるかどうかを確認し、解像力を測定します。
矩形パターンは下記のような感じです。
また、チャートは中心エリアだけでなく、周辺へも配置され、カメラ撮像エリアの広い範囲で解像力が測定できる。解像度チャートはISO12233で定義されている物もあり、購入可能。
投影解像力の測定イメージは下の図のような感じです。前方にある、上記解像度チャートをカメラで撮影し、イメージャを通して撮影された画像を見て、判断します。照明や、撮像倍率、撮影条件を整えても、最終的に解像度を決めるのが人間の目であり、評価者による差異や同じ評価者においてもバラつきが出る為、主観評価に分類されます。
投影解像力
投影解像力評価のイメージを下の図に示します。この方法は、投影機に解像度チャートを入れ、被検レンズを用いて撮像エリア(スクリーン)に撮像した時に、どの空間周波数までチャートが分離して見えるかを判断します。
これらの解像力検査の課題は、縞が分離して見える限界の空間周波数は検査できても、低周波領域は検査できないという事。(縞が見える、見えないという判断しかできず、「どのくらい」という中間値が分からないという意味)また、計測者の目とスキルに頼らざるを得なく、再現性が悪い、測定のバラつきが大きいという所に課題があります。
MTF
MTF測定とは、ある一定の周期で並べられた明暗の縞をレンズを通し像結合させた時の明暗比を測定する事を言う。明暗比の事をコントラストと呼び、コントラストをC,光の強度をa,b(明るい部分をa,暗い部分をb)と定義すると、次の式で表される。
そのコントラストの伝達を測定する事(正しくはその伝達関数)をMTFと言います。
MTF: Modulation Transfer Function
C = (a-b) / (a+b)
チャートのイメージはこんな感じ。(いろいろ種類がありますので、その代表例)
理想的な結像は、被写体の微細なコントラストまで像面上に正確に再現する事ですが、光が波動である事により、回折、収差や、レンズの汚れによる散乱、表面反射などが影響し、コントラストは正しく伝達されません。
一般的には、空間周波数が高いほどコントラストが低下し、収差の影響で中心から外れるほど低下する。分かりやすく言うと、細かい物はボケて見えるという事、また、画面の周辺は画面の中心より解像度が悪い。という事がカメラでは原理的に発生してしまう。
MTFを表す時によく使われる変数は次の通り。
- 空間周波数
- 後に説明するが、解像力の事
- 像高
- 画面中心を0,画面4隅を10とした時の、画面中心からの距離。例えば像高5割といえば、カメラが撮像する全エリアの直径を10とした時、直径5の位置。
■縦軸:MTF、 横軸:空間周波数 の時のグラフは下のようなイメージ
■縦軸:MTF、 横軸:像高 の時のグラフは下のようなイメージ
MTFは解像力と異なり、低周波から高周波までの再現性を判断できる事や、測定値とシミュレーションとの相関が良いという点で優れています。
空間周波数
空間周波数は、撮像素子の画面上に白黒のチャートを写して、白黒の縞をペアで1本と数えて、1mmの中に何ペアの線が解像して見えるかという定義で、単位をlp/mm(lp:Line pair)もしくは本/mmと呼ぶ。注意点としては、ペアで1本という数え方となる事が注意点です。
※後に示すTV解像度は白黒の縞をそれぞれ1本と数える為、注意が必要です。
TV解像度
TV解像度は白黒のチャートを写して、白黒の縞をそれぞれ1本と数え、画面の短辺側(4:3や16:9のカメラの場合は画面の縦方向)の中に何本解像して見えるか。という定義となる。
つまり解像度チャートをカメラで撮像する時、 4:3や16:9等の縦方向の方が短いカメラの場合は、縦方向の画枠をしっかり合わせ、撮像する必要があります。
解像度L(空間周波数(lp/mm))とTV解像度R(TV本)、撮影画像の短辺寸法(Vmm)は次の式で表す事ができる。
L = R / 2V
解像度チャートの代表的な物は上でも示した、ISO12233に準拠した下記の物となります。
レンズに関しては下記の記事も記載しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識
参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、レンズ構成、レンズのスペックを分かりやすく解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、収差、スネルの法則をわかりやすく解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、撮像素子(イメージセンサ)における制約を解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズコーティングの関係を解説
動画でも解説していますので、よろしかったらご覧いただければと思います。
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