カメラのレンズの基礎知識入門という事で、レンズに関する基礎を記載していきたいと思います。今回は、レンズ構成、レンズのスペック(焦点距離、画角、Fナンバー、許容錯乱円径、焦点深度、被写界深度)を題材に説明していきます。カメラ好き、レンズ好き、エンジニアの方向けに分かりやすく記載していきたいと思います。
レンズ構成
レンズのカタログには、「レンズ構成」としてレンズが何群何枚と記載されている事が多いと思います。それぞれの意味は下記。
・群:単玉レンズ、または異なる種類の高額ガラスを接合した、接合レンズを1つの群と数える
・枚:単玉レンズ、接合レンズそれぞれを1枚と数える。
つまり下の例では、4枚目と5枚目が接合レンズとなっており、全部で5群、6枚のレンズ構成という事になります。
レンズスペック
焦点距離と画角
■焦点距離:レンズから像を結ぶ位置までの距離
■画角:撮影可能な範囲。次の式によって定義される。Y=f・tanΘ。 これを中心射影法と呼ぶ。
Y:増高、f:焦点距離、Θ:半画角
イメージは下の図の通りです。
焦点距離と画角の関係ですが、焦点距離が短いほど画角が広く、長いほど画角が狭くなります。フルサイズのイメージャ、APS-Cのイメージャそれぞれを例にとった時、焦点距離と画角の関係は下の表のようになります。
画角 | APS-Cサイズイメージャ 焦点距離 | フルサイズイメージャ 焦点距離 |
110° | 10mm | 15mm |
94° | 14mm | 20mm |
75° | 18mm | 28mm |
47° | 35mm | 50mm |
24° | 70mm | 100mm |
12° | 135mm | 200mm |
8° | 200mm | 300mm |
一般的には焦点距離50mmが標準と言われており、これが人間が見た感覚に最も近く、自然に感じる画角となります。これより広い物は広角、狭い物を望遠と呼ばれます。
最近のレンズは魚眼レンズと言われる広角のレンズがありますが、これは投影方式も異なります。魚眼レンズをフィッシュアイレンズとよく呼ばれますが、画角が180°を超える為、tanΘが無限遠となってしまう為、次の式によって定義されます。これを立体角射影と呼びます。
立体角射影 の式:Y=f・Θ
Fナンバー
Fナンバーとは
レンズによりできる像の明るさを示します。
下の図のように、Fナンバーは次の式で求められます。
Fナンバー = 焦点距離f / 有効径a
Fナンバーは小さいほど、1点に結ぶ光の量が増えて明るい画像となります。一般的には、Fナンバーが小さいレンズの事を ”明るいレンズ” や ”ハイスピードレンズ”、”大口径” と表現されます。ハイスピードとは、光量が多い分だけ、シャッタースピードが速く出来る為にそのように呼ばれます。
光量は入射する光束の面積で決まる為、光量は有効径の2乗に比例。よって、Fナンバーは焦点距離が一定なら、有効径に比例するので、Fナンバーが2倍になれば、光量は4倍になります。
このため、写真レンズのメモリは次のように√2の倍数系となります。
1 | 1.4 | 2 | 2.8 | 4 | 5.6 | 8 | 11 | 16 | 22 | 32 | 45 |
許容錯乱円径
ピントがズレてもボケとして認識出来ない程度のボケ量の事を許容錯乱円径と言います。
フィルムカメラの場合、おおよそ画面対角線の1/1000~1/1500の大きさとされていて、35mm判では、φ30um前後と言われています。
また、モニタ上でピクセル等倍で確認する事が多いと思いますが、その場合、2画素分の長さが許容錯乱円径となります。この時、白と黒のペアが2画素(2ピクセル)より小さくなると解像できなくなり、この、2画素に相当する周波数をナイキスト周波数と呼びます。
焦点深度
まず、深度とは、光軸に沿った方向(デフォーカス方向)でボケていない範囲の事を言い、焦点深度と被写界深度の2種があります。
その中で焦点深度とは、画像上でボケて見えない範囲の事を指し、図で示すと下のようになります。
被写界深度
被写界深度とは、その被写体の前後にもあたかもピントが合っているように見える範囲で、距離Dの被写体にピントを合わせた時、遠方Dfと近点Dnは次の式で求められる。被写界深度は焦点距離が短いほど、また、Fナンバーが暗いほど深くなる。
1/Df = 1/D – dF/f^2
1/Dn = 1/D + dF/f^2
Df: 遠方深度 D:被写界深度 Dn:前方深度 f: 焦点距離 dF: 焦点深度
動画でも解説していますので、よろしかったらご覧ください。、iPhoneの仕様を題材にしていますので、見やすいと思います。
レンズに関しては下記の記事も記載しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
参考:【光学用語集】カメラモジュールに使われる、光学設計、レンズの基礎知識
参考:まずはこれだけで合格点。カメラを設計する為のレンズの基礎知識
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、解像力、MTF、空間周波数、TV解像度を解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、収差、スネルの法則をわかりやすく解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、撮像素子(イメージセンサ)における制約を解説
参考:【カメラ】レンズの基礎知識入門、ゴーストとレンズコーティングの関係を解説
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