今ではかなりメジャーとなった、カメラの通信規格、MIPI CSI-2について簡単にまとめたいと思います。これからカメラ関連の開発を実施する予定のものづくりエンジニアの方、または、すでにカメラ関連の開発をしていて、MIPIという言葉だけは知っているけど、どんな規格なのか詳しくは知らない。という方、
そんな方向けに、出来るだけ簡単にMIPI CSI-2に関して説明していきたいと思います。
今回はかなりエンジニアよりの記事になると思いますが、どちらかというと、こういった内容の方が私は得意ですので、少しワクワクしています。
もしMIPIのD-PHYに興味がある方は下記でD-PHYに特化した記事も書いていますのでよろしかったらご参照頂けたら幸いです。
MIPI Alliance の目的
MIPI CSI-2とはカメラの通信規格です。カメラ開発をする方は絶対の押さえておかなければいけない規格です。MIPI Allianceとはこの通信規格の導入の推進を目的としています。
カメラモジュールという物が開発され、既に何十年もたっていますが、その進化の過程の中、仕様に関する紆余曲折が多大にありました。いろいろな歴史がありますが、その中でも、開発エンジニアが最も困った内容はインターフェイスの通信規格です。
カメラモジュールというのは、下の記事に記載しました通り、単体では動作できなく、カメラからの映像信号を、接続先のマイコン、SoC、ISP等へ送信しなければいけません。つまりその接続仕様が接続先ごとに違うと、接続先ごとに、インターフェイスを変更しないといけないという事態が発生し、本アライアンスが出来る前は、開発の為に仕様変更、と、多くの開発費が割かれてきました。
つまり、本アライアンスが出来る前は、各社独自のIF規格を作っていたのに対し、本アライアンス以降は、統一されたIF規格により、部品の流用、設計の流用といったように、かなり大きなメリットとし、カメラの仕様に貢献したと思っています。
※カメラモジュールに関しては下記のページでまとめておりますので、参照頂けると嬉しいです。
MIPI CSI-2 IFの概要
そもそもMIPI CSI-2とは。ですが、
Mobile Industry Processor Interface Camera Serial Interface-2 の略です。
本通信規格の構成として、次の2つのIFがあります。イメージ図は下の通りで、
それぞれの特長は次の通りです。
- CSI-2(Camera Serial Interface 2)
- 映像データ転送に特化したプロトコル
- 単方向データ転送
- 再送はしない
- 映像データと、同期信号をパケット化し転送
- エンベデッドデータやユーザ定義データ等の送信も可能
- 高速データ転送可能 ~1500Mbps以上/lane (v1.1) 時代によって進化する
- 複数レーン構成可能 1~4対のデータレーン構成
- 映像データ転送に特化したプロトコル
- CCI(Camera Control Interface)
- カメラモジュール制御IF
- I2C互換
- SCL,SDA(I2C)
- 双方向データ転送
- Fast mode ~400kbps (時代により進化)
- 7-bit アドレス
- Multi Mastareは非対応
- Multi Slaveは対応
MIPI パケット構造
次はMIPIのパケット構造について、下の図を使って説明していきます。
MIPIのパケットは2種類あります。
- Long Packet
- 画像データや、エンベデッドデータの転送に使用される
- Packet Header(PH)、Packet Data、Packet Footer(PF)で構成される
- 上の図で言うと、赤枠で囲われて部分、左の図の赤枠で囲んだエリアは、フレームの映像信号が入っている1ラインを示しており、そのパケット構造がどうなっているのか詳細をオレンジの矢印の先に示しています。
- Short Packet
- Frame Start/End、Line Start/End、V/H同期信号等の転送で使用される
- Packet Headerのみで構成される
- 上の図で言うと、青枠で囲われている部分、左の図の青枠で囲んだエリアは、Frame Startを示しており、そのパケット構造がどうなっているかを青矢印の先に示しています。
- その他ルール
- パケットの区切りには必ずLPS(Low Power State)を挟む
- 1パケット=1バースト=1ラインで転送
- フレームの最初にFSを伝送する
- フレームの最後にFEを伝送する
- ブランキング中はLPSとなる。
- 複数の画像を同時に転送が可能(複数カメラの画像をラインごとに混ぜたりすることも可能)
MIPI D-PHYの概要
それではハードウェア設計者の大好物の物理層の説明をしたいと思います。
特長的な内容として、MIPIの物理層は、高速(HS(High Speed)モード)、低速(LP(Low Power)モード)の2つの信号が同じレーンの中に混ざって伝送される事です。これら物理層の仕様と、物理層と論理層の関係を見ていきましょう。D-PHYについては下記の記事でも詳しく説明しておりますので参照頂ければ幸いです。
参考:MIPI D-PHY徹底解説、カメラ開発のものづくりエンジニア必見
【MIPI D-PHY 概要】
- 1つのクロックレーンと、最大4ペアのデータレーンで構成されている
- クロックレーンの特徴
- DDRクロック伝送
- データに対し、90°位相が異なる
- データレーンはHSの時は、クロックレーンも必ずHS
- データレーンの特徴
- 差動信号で伝送
- LSB Firstで伝送
- クロックの立ち上がり(Positive Edge)のデータがFirst Data
- 各モード時の最大データレートは↓
- HS(High Speed)モード:80Mbps~1Gbps
- LP(Low Power)モード:10Mbps以下
- 各モード時の信号方式は↓
- HS(High Speed)モード:LVDS、差動100Ω終端
- LP(Low Power)モード:終端抵抗なしのシングルエンド動作
- 各モード時の信号レベルは↓
- HS(High Speed)モード:200mV差動
- LP(Low Power)モード:1.2Vシングルエンド
パケット構造として、ロングパケットとショートパケットがあると前のトピックで説明しましたが物理層では、これらパケットはHSモード(下図赤)で動作し、パケットとパケットの間はLPモード(下図緑)で動作する、という特徴があります。
このHSモードのような高速配線は、パターン設計やノイズに関するケアも必要になります。その辺りは次の記事など参考なるかもしれませんので、よろしければご参照お願いいたします。
->ノイズとの闘い。ものづくりエンジニアの為の、EMCとは?EMC設計技術とは?
->【高速信号配線&基板ノイズ対策】プリント基板のパターン設計ノウハウ集
->CEマークと、機械指令、低電圧指令、EMC指令について解説します。
その他、高速信号系、回路関係の記事は下記の記事を参照頂けると幸いです。
参考:ものづくりエンジニアの為の、CMOSイメージセンサ、回路設計の勘所
参考:差動伝送規格、LVDSとは?誤解されがちな規格とメリットを徹底解説
参考:車載用高速伝送ソニーのGVIFとは、FPD-LINKやGMSLも合わせて解説
参考:USB3.xとUSB2.0の違いをエンジニア視点で解説します。
参考:DDR-SDRAMとは、仕組み、動作、オシロスコープでの測定方法の解説
エンジニアを目指されている方、下記も参考にどうぞ。
参考:収入アップの為の、おすすめプログラミングスクール3社を紹介します
✓まとめ
以上がごく簡単ですが、MIPI CSI-2の概要となります。物理層としては、異なる2つの電圧、スピードの信号が同じライン上に載って伝送される事が最も大きな特徴になると思います。
詳細はMIPIのアライアンスが仕様書を公開しておりますので、そこでもご覧いただけます。実際に設計する場合はその仕様書を読み込む必要があると思いますが、概要という意味で、今回は、論理層と物理層に関して簡単に記載をさせていただきました。
Youtube動画もアップしておりますので、よろしければご覧いただければ嬉しいです。
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